個店の覚悟。〜レジェンド店主のコラボにまつわるあれこれ〜【アメ横・玉美 編】

街の小さなセレクトショップとしてスタート、いまでは多くの服好きを惹きつけるレジェンドショップがある。資金、販売拠点という面において、大手セレクトショップよりも小規模な彼らがいかにして数々のコラボアイテムを生み出してきたのか。そこには彼らの血の滲むような努力と内に秘めた覚悟があった。

Pt.アルフレッド/店主・本江浩二さん|1960年、富山県出身。数々のブランドの営業、生産を経て88年に独立。94年に「Pt.アルフレッド」をオープン。オリジナルブランドのチノパンは世界随一のラインナップを誇る

何か面白いものはないか、常にアンテナを張り、とにかく脚を使ってアイデアの源を探します

日本におけるアメカジブームの礎を築き上げたリビングレジェンドの人生を深掘りする人気連載「ザ バイオグラフィ」のナビゲーターとして、はたまたスナップや愛用品取材など業界人取材企画の常連として。本誌にとって欠かせない存在の本江さん。“街のチノパン屋”として、恵比寿に「Pt.アルフレッド」をオープンしたのが、1994年のこと。当初は自身のオリジナルのチノパンと少量のセレクトアイテムのみでスタートしたのだという。

「取り扱うアイテムを幅を広げていくなかで、国内外の様々なブランドのプロダクトに触れ、『こういうものを作りたい』というところから自然とコラボを始めるようになりました。覚えているなかでは、最初にコラボしたのはカナダのラグビージャージメーカー『バーバリアン』だったと思います」。

いまではラグビージャージの代名詞的な立ち位置を築いている『バーバリアン』だが、90年代後半はメジャーな存在ではなかった。そういった大きく取り上げられてはいないブランドを見つけ、スポットを当てる、そしてタッグを組んでアイテムを作り出すのが本江さんの真骨頂ともいえる。

「良いブランドであったり、情報を得るためにもとにかく脚を使うことを大切にしてきました。店は火、水曜が定休日なのですが、展示会があれば顔を出しますね。一日で5件以上回ることもあります。『何かないか、何かないか』と隅から隅までチェックします。例えば、定期的にコラボしているスコットランドのレザーブランド『マクロスティ』も展示会でみつけたブランド。同じくスコットランドのニットメーカー『マカラスター』も展示会場にポツンと置かれていて、『これいいじゃん』と思い、取り扱いを始めることに。脚を使っての細かな情報収集はもはやライフワークとなっています」。

自らもチノパンを製作する本江さんのコラボをする際のモットーはオリジナルへのリスペクトだ。基本的に“本物”があるものは作らず、色柄や素材の別注はするものの、型まで変えることはほとんどないのだという。

「ブランドそれぞれにポリシーがあって、プライドもある。自分自身もモノづくりをしているからこそ、そこに手を出すのは違うと思っていて。オリジナルを尊重することは忘れないようにしています。昔、海外のブランドの方に『日本からの別注は要望が細かくて嫌だ』と言われたこともあって(笑)。面白いモノを作るためにも、同じ目線で、二人三脚で歩んでいく必要があると思います」。

もちろん、リスクもある。例えば、前出の「マクロスティ」はスコットランドの老舗馬具屋さんで、規模が小さい分、融通が利くというメリットがあり、品質も高いのだが、認知度が低いため、後継者問題も含めて問題が生じる可能性も大いに考えられる。個店の宿命ともいえるが、常にリスクと隣り合わせというわけだ。

「リスクももちろんありますが、ブランドと取引や駆け引きではなく“取り組み”をしているので。どちらが上とかではなく、歩み寄ることが大切です。そもそもリスクなんていったら恵比寿に店を出すこと自体がリスク(笑)。そこで作ったモノをしっかりと売っていくことに覚悟を決めています」。

スコットランドの老舗レザーブランド「マクロスティ」のベルトのサンプル。膨大なサンプルの中から革の種類やカラー、バックルを選んで別注をかける。過去には49インチのベルトを作ったこともあるのだとか

【DATA】
Pt.Alfred
東京都渋谷区恵比寿西2-4-5
TEL03-3477-7952
https://www.ptalfred.com/
12:00~20:00  火、水曜定休

(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)

この記事を書いた人
みなみ188
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みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
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