一度は手放してしまった、アメリカンヴィンテージを知り尽くした男の今再びの、オリジナルのジョーダン1。

1990年代に手に入れたものの手放してしまったオリジナルのジョーダン1。ここ数年、堀内さんのなかでリバイバルブームが起きているという。

リペアしてまで履きたいオリジナルのジョーダン1がやっぱりカッコいい。

バスケットボールの神様と称えられるマイケル・ジョーダンのシグネチャーモデルとして1985年に登場したナイキ エアジョーダン。その歴史は以降、毎年デザインを変えて発売された伝説のモデルとなった。1990年代、空前のスニーカーブームにより、一躍プレミアムシューズとなった初代のジョーダン1は、その美しいフォルムから後年になっても幾度か復刻されるなど大人気モデルとなった。現在もコレクタブルアイテムとしてスニーカーファンから愛されているのは言うまでもない。

本誌「ボクのアメリカ」企画でオリジナルのジョーダン1を見せてくれたのはヴィンテージワークスの堀内さん。デニムをはじめ様々なアメリカンヴィンテージへと精通する彼のジョーダン1は40年前に作られた1985年製造のモデルだがいまだに現役だ。

「初めて買ったのはボクが20歳前後の1996年あたり。当時、ハイテクスニーカーブーム真っ只中にあって、このジョーダン1もかなり高額ではあったのですが、あまりのカッコ良さに欲しくなってしまって買ったのが最初の一足め。色はブラック×ブルーで当時、一番クールなカラーリングと言われ、なかなか手に入らなかったモデル。残念ながら数年後に手放してしまうのですが、ここ数年、カッコ良いスニーカーに巡り会わず、やっぱりジョーダン1に戻ってきてしまいましたね。ボクは足のサイズが大きいので意外と弾数はあるんじゃないかなと期待していたのですが、甘かったですね。全然ない。探すのにめちゃ苦労しました」

1985年製のオリジナルのジョーダン1を3年ほどかけて集めた堀内さん。当然、ソールのゴムは硬化しており、滑って履けるコンディションではなかったが、ソール交換が可能であることを知り3足とも依頼。正確にはここにはないブラック×ブルーもリペア中で撮影日には間に合わなかったという。ソール交換&メインテナンスにより新品のように息を吹き返したオリジナルのジョーダン1。

「硬化しているソールは滑るので年齢的にも危なくて履いてられませんからね。思い切ってリペアに出すことにしたんです。もちろんソールは新品ですがヴィンテージと同じく少し黄ばみを入れてオリジナル感を出しています。しっかりとリペアしてあって、決して安くはありませんが、オリジナルならではのアッパーのフォルムは復刻モデルでも完璧には再現できなかったですからね。やっぱりオリジナルが一番カッコ良い。色も昔はブラック×ブルーやレッド×ブルーなど派手な色が良かったですけど、最近は当時、地味な存在だったナチュラルカラーを履くことが多いです。最近のスタイルの中ではしっくりくるカラーリングかなと思っています」

消耗品としての位置付けであるスニーカーだがオリジナルのジョーダン1の作りの雰囲気は確かに後年の復刻モデルでは再現できなかった問題。ある意味、復刻が発売されるたびにオリジナルの良さが助長されたのはファンの中でも共通認識とされているところだ。そのほかアッパーに使われている革の質も同じくオリジナルに勝るものはない。

「最近、ジョーダン1を履き出したせいもあってかジャンプマンロゴを見かけるとつい反応してしまって。自分の中ではジョーダン病と呼んでいるんですけど、ロゴのウエアとかグッズまで着ないのに買ってしまったりと、その病に30年冒されている気がします。当時、ジャンプマンロゴのウエアなんて全く興味わかなかったですからね。一度手に入れて手放してしまったスニーカーをまた血眼になって探している自分を俯瞰で見ると好きなものって変わらないんだなと感じさせられます」

スニーカーが消耗品だった時代はとっくに過ぎ去り、好きなモデルなら可能な限りリペアし続けて履くのが今の時代。アッパーさえ綺麗であれば半永久的に履けてしまうという理屈があれば「旧いし壊れたから捨ててしまおう」なんて考えには至らなかったはず。

「スニーカーをリペアして履くなんて考えはなかったですからね。当時に比べてアッパーの扱い方も慎重になりますし、残存数も圧倒的に少ないですから、このスニーカーたちとの出会いを今後も大切にしていきたいと思っています」

「Vintage Works」堀内賢|良質な革を使用した日本製のベルトを手掛けるヴィンテージワークスのディレクター。デニムやワークウエア、ブーツなど、ヴィンテージ好きとしても知られ、それらのファッションと相性の良いベルトデザインに定評がある。

1985 NIKE AIR JORDAN 1

複数所有するカラーの中でも最近のお気に入りだというナチュラルカラー。コーディネイトを問わず合わせやすいことと、悪目立ちしないことから着用頻度も高めなのだとか。ソールを貼り替えたとは思えないほど、黄ばみなども再現されている。ヴィンテージの多くがソールは硬化していることがほとんど。

1985年の発売以来、レプリカモデルが数度発売されたが、トゥのシュッとしたシルエットは、やはりオリジナルが1番カッコ良い。

アウトサイドのアンクル部分に堂々とプリントされるジョーダンのウィングロゴ。ジョーダンファンの好きなディテールのひとつだ。

(出典/「Lightning 2025年5月号 Vol.373」)

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