全国に37店舗を展開する、「古着屋JAM」福嶋政憲さんの原点とも言える「パタゴニア」のフリース。

「古着屋JAM」をはじめ、全国に37店舗を展開している「JAM TRADING」の代表、福嶋さん。彼にとってのアメリカは、いまの自分を作り上げるための人生の苦楽を経験した場所であった。

人生の指針となる、アメリカ旅の相棒。

古着屋JAMを経営する福嶋さんにとってアメリカとは、良い悪い両方の経験をした思い入れのある場所。

「24歳の時に、『俺は古着屋をやんねん』と勤めていた会社を辞めました。でも、軍資金を貯めていたわけでもなく、コネもなかったので昼と夜のバイトを掛け持ちし、開業資金を貯め始めました。バイト先の焼き鳥店に中村くんという、自分より6つも年下の子がいました。その子はカナダへ留学するための費用を稼ぐためという明確な理由を持ってバイトをしていました。古着店を始めるという目的はあったものの、何から始めればいいのかも分からない僕は、素直に尊敬していました。

実は今、その中村くんは『JAM』にいて、一緒に働いているんです。半年後、彼がカナダへ留学をする際に、『カナダへ遊びに来ませんか』って言ってくれて、彼に会いにカナダ・アメリカへ行きました。ハワイには行ったことがあり、初めてのアメリカではないのですが、アメリカ本土というと初めて。ネットもあまり普及していない時代、『地球の歩き方』を片手に向かいました。その時は、軽い気持ちで、ただの遊びのつもりで行きました。でも様々な文化に触れ、自分が何をしたいのかが明確になった気がしました」

そんな人生の指針となった旅の途中、ニューヨークのソーホーにあったパタゴニアで「レトロX」を購入したという。人生初のアメリカ横断旅の相棒は現在でも現役だ。

「このフリースを着てアメリカを巡ったんです。たしか、お店にメンズサイズが無く、キッズサイズを買ったんです。当時の写真にも、このアイテムを着用しているものが結構残っていました。その旅は、その時の自分の抱えていた迷いを整理して、古着店を始める、という大切な目的を思い出させてくれた旅。その時の気持ちを思い出せるアイテムがこの一着です」

帰国後、バイトなどを続けて開業資金を手に入れた福嶋さんは、ワーキングホリデーでオーストラリアを訪れるなど様々な経験をし、2002年に大阪で自身の古着店を開業。2007年には「JAM TRADING」を設立することになる。

「JAMを始めてから3年後の2012年、アメリカ・ニューヨークに買い付け等の拠点、仕入れのための支店を持つことにしたんです。その当時、アメリカの西海岸の方は、多くの古着店が買い付けのために回っていたので、新参者の僕らが敵うわけないと考え、東海岸に着目したんです。そういった動きをする上で、宿泊代やレンタカー代がかなりかかっていたので経費削減のために、ニューヨーク州クィーンズのレゴパークに『JAM TRADING USA』を開業するんです。

その頃、お店の規模もどんどん大きくなってきて、仕入れ内容も変わっていったので、2018年までの6年間で閉めることになるのですが、多くのことを経験できた時間でした。ちょうど今年、そのニューヨーク支店のことを思い出していて、それにまつわるアイテムを作りました。そういったタイミングもあり、改めて、僕にとってニューヨークは特別な場所なのだと再認識しました」

福嶋さんにとってアメリカは多くの思い出を刻んだ地であり、酸いも甘いも経験した場所。そして、ニューヨークでの経験は、彼が「JAM」を育てていく上で、大きな礎となったことは間違いない。

「JAM TRADING」福嶋 政憲|1973年、大阪出身。脱サラし古着店を開業。「古着屋JAM」をはじめとする「JAM TRADING」の代表取締役社長を務める。最近船の免許に挑戦し、2級船舶免許を取得。これから、1級船舶免許への挑戦も視野に入れている。

Patagonia Retro-X Fleece Jacket

当時購入した「パタゴニア」のフリースはキッズサイズ。購入した時から25年以上経ったいまでも、着ているという現役選手だ。

アメリカ横断旅行の際に撮影した写真をお持ちいただいた。写真の多くに、ニューヨークで買ったパタゴニアの「レトロX」を着用している姿が見られる。

ニューヨークに設立した「JAM TRADING USA」を思い出し、作ったというキャップ。側面には、「REGO PARK」の文字が入る。

背面には「JAM TRADING USA」と文字の刺繍が入る。5月下旬発売予定。7700円(古着屋JAM 原宿店TEL03-6427-3961)

(出典/「Lightning 2025年5月号 Vol.373」)

この記事を書いた人
なまため
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なまため

I LOVE クラシックアウトドア

1996年生まれ、編集部に入る前は植木屋という異色の経歴を持ち、小さめの重機なら運転可。植物を学ぶために上京したはずが、田舎には無かった古着にハマる。アメカジ、トラッド様々なスタイルを経てアウトドア古着に落ち着いた。腰痛持ちということもあり革靴は苦手、持っている靴の9割がスニーカーという断然スニーカー派。
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