民間衣料品に影響を与えた黎明期の飛行服。

ミリタリーブランドの第一線で活躍する、バズリクソンズ企画統括の亀屋さんを招き、深淵なるフライトジャケットの世界から、汲めども尽きぬ情報の泉をお届けする。今回取り上げるのは、「民間衣料品に影響を与えた黎明期の飛行服」だ。

アビエーション・アソシエイツのデザインルーツとは?

アビエーション・アソシエイツは、当時、軍のコントラクターであったバズリクソンズが、民間向けに飛行服をリリースしていた、というストーリーを元にアイテムを展開するコレクションライン。バズリクソンズ・スピリットが凝縮されたモノづくりとなっており、クラシカルな印象を受ける魅力的な装いのアイテムが展開される。そこで今回は、亀屋塾長がおすすめするお気に入りアイテムを紹介してもらった。

「アビエーション・アソシエイツのデザインルーツは、1920年代から`40年代にかけての飛行機パイロットや航空関連のウエアにあります。その黎明期の飛行機はコクピットが剥き出しとなった複葉機が主流でした。そこで機体に搭乗するパイロットたちは腰まですっぽりと覆う着丈の長いフルレザーのコートを身に纏っていました。やがて飛行機が進化することで、着用される飛行服も機能性や運動性を重視して、着丈が短くなったり動きやすくなったりと、素材やデザインも大きく変わっていきます。

特にレザーコートのようなアイテムには、当時の飛行服に見られる古めかしいディテールがそのまま生かされており、例えばポケットの位置や形、風の侵入を防ぐためのデザインが特徴です。

これまでのフライトジャケットやミリタリーウエアに比べて、よりドレッシーな印象を与えるデザインに仕上がっているので、ウールパンツや革靴など上品なアイテムと組み合わせることで、普段のカジュアルなフライトジャケットとは異なる、クラシックで上質な雰囲気を着こなしで楽しんでもらいたいですね」

 亀屋康弘|フライトジャケット研究家であり、バズリクソンズの企画統括を務めるミリタリーカルチャーの有識人。数々のヴィンテージを分析し、当時の様々な資料を読み解き、経験から得た膨大な知識でフライトジャケット初心者から玄人まで、塾生たちを導いてくれる頼もしい存在でアリマス

【アイテム①】RABBIT FUR HAT Mr. FATMAN / BUZZ RICKSON’S|AVIATION ASSOCIATES(BR02819 / 8万2500 円)

1910年代後半から1920年代にかけて、アメリカやイギリスでは「飛行士のための衣料」というカテゴリーで、専門のカタログが販売されていた。これには飛行用のジャケットやコート、ゴーグルなどが紹介され、飛行士や航空愛好家たちが自らの装備を選ぶ手助けとなっていた。また当時の飛行士たちの写真資料を探っていると、寒さから回避すべく一様に革製コートの下にはセーターやベスト、ヘッドウェアにはキャスケットやハット、首周りにはスカーフといったクラシカルで紳士的な出立であることが多い。そこで「THE FAT HATTER」が展開するブランド“Mr.FATMAN”とのコラボにより、当時の飛行士たちがめかし込んで被ったハットを、ラビットファーで製作。

【アイテム②】RAYON SCARF|AVIATION ASSOCIATES(BR02822/各1万6500円)

黎明期の飛行士たちは、襟元からの風の侵入を防ぐためにスカーフを首に巻いていたが、単なる防寒具以上の意味を持っていた。寒さを凌ぐための必需品として使われた一方で、オフ・デューティー(Off Duty/パイロット達が任務を終えた時間)にもその機能性とエレガンスを活かしていたという。またシルクやレーヨンの素材が持つ肌触りの良さと上品な光沢感は、当時の飛行士たちにとって機能性だけでなく、スタイルの一環として欠かせないものになっていた。それは色柄に工夫を凝らすことでスカーフがアクセサリーとしての役割を果たし、全体のコーディネートを格上げしてくれるアイテムであったのだ。

【アイテム③】HORSEHIDE AVIATOR COAT|AVIATION ASSOCIATES(BR80651/39万6000円)

飛行士たちが1910年代から1920年代にかけて着用していた革製のコートは、当時の飛行環境における実用性を反映している。ライト兄弟が1903年に初めて有人飛行を成功させ、飛行機が商業や軍事において重要な役割を果たし始めた黎明期、飛行士たちは高空での寒さや風圧にさらされることが多く、そのため防寒対策が必須であった。そこで長時間の飛行でも快適に過ごせる装備として、動き易く腰まで覆う重厚な革のコートが多くの飛行士たちから支持を得ていた。特徴的なDポケットやブラス素材のバックル、脇下のベンチレーションホール、そして袖先からの冷気侵入を防ぐインナーリブの仕様など、非常にクラシカルなディテールに注目したい。

今年も開催決定!2025年2月16日(日曜日)にミリタリーファンが集うイベントを新宿ジャンキースペシャルにて開催!

2025年2月16日、新宿ジャンキースペシャルにて「BUZZ RICKSON’S MILITARY BRIEFING」を開催! 新作アイテムの展示やミリタリー好き同士の情報交換、限定ノベルティのプレゼント、そしてバズリクソンズ企画統括の亀屋康弘氏と、Lightning編集部の松島親方、モヒカン小川が出演するYouTube配信動画「フライトジャケット塾」の公開収録も予定。ミリタリー愛にあふれるトークや貴重な情報を直接体験できる絶好の機会になるゾ!

■ 開催日/2025年2月16日(日曜日)
■ 会場/JUNKY SPECIAL2階 特設会場
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-46-5 KM新宿ビル TEL03-3232-0850

【問い合わせ】
バズリクソンズ(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321
http://www.buzzricksons.jp

(出典/「Lightning 2025年3月号 Vol.371」)

この記事を書いた人
ADちゃん
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ADちゃん

ストリート&ミリタリー系編集者

Lightning本誌ではミリタリー担当として活動中。米空軍のフライトジャケットも大好きだけど、どちらかといえば土臭い米陸軍モノが大好物。そして得意とするミリタリージャンルは、第二次世界大戦から特殊部隊などの現代戦まで幅広く網羅。その流れからミリタリー系のバックパックも好き。まぁとにかく質実剛健なプロダクツが好きな男。【得意分野】ヴィンテージ古着、スケートボード、ミリタリーファッション、サバイバルゲーム
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