ミリパンに手を出すなら、ECWCS以降のテック系トラウザーズを個性的に着こなすべし!

1985年より米軍で採用されたECWCSは、今や各国のミリタリーウエアにも大きな影響を与えている。第二次世界大戦時のミリタリーウエアが根幹となるアメカジスタイルには、一見合わせにくいと
感じるかもしれないが、その機能性と独自のデザインをうまく取り入れば、最上のデイリーウエアとなる。

米軍の近代装備は、斬新なデザインかつ機能美が光る!

ヴィンテージと呼ばれるミリタリーの中心は、ベトナム戦争より前の1970年代以前のもの。その一方で、ミリタリーウエアは進化を続けており、世界一の軍事大国であるアメリカにおいて、大きなエポックメイキングとなったのが、1985年より採用されたECWCSこと拡張式寒冷地被服システムである。

1960〜’70年代にかけてアメリカのお家芸のひとつとなったアウトドアウエアから着想を得たシステムで、細かくレイヤリングをすることで、活動地域の様々な気候に対応するというもの。そのシステムは常にアップデートを図っており、現在はジェネレーション3まで進化。そんな近代装備のミリタリーを多く扱う、下北沢の人気ショップ、ムーの貴志さんにその魅力を聞いた。

「ムー」オーナー・貴志浩平さん|人気ドメスティックブランドやヴィンテージショップのスタッフなどを経て、2019年に独立し、下北沢にムーをオープン。頻繁に米国へ渡る

「第二次世界大戦時から続いてきたミリタリーウエアとはまったく違うアプローチのユニフォームが数多くあることではないでしょうか。もちろんその年代のヴィンテージも魅力的ではありますが、先人の方々が様々な角度からアーカイブを発掘してくれたので、なかなか新しい発見は少ないのが現状。その一方でECWCS以降のミリタリーウエアは、これまで見たことのないデザインが多いので、純粋に洋服としてユニークだと思って集めています。知識武装して選ぶのではなく、直感でセレクトできるのも魅力ですね。それでいて機能性も高いのでデイリーウエアとして最適だと思います」

ECWCSの装備からゴアテックスやプリマロフト、フリースなど、アウトドアでもお馴染みの素材が使われ、より機能的になったことは間違いない。またアウトドアウエアから着想を得たこともあり、コントラクターとしてパタゴニアやワイルドシングスなどの有名アウトドアブランドが参画したのも、人気の一因であろう。

「近年だとレベル7やモンスターパーカは市民権を得ていますし、2000年代にパタゴニアが協力したMARSは、採用期間が短く、生産数も少なかったので、近代装備のアイコニックな存在。ただトップスは人気が高く、なかなか手の出ない金額になっていますが、ボトムスなら手の届きやすい金額です。ミリタリーや古着といった文脈ではなく、純粋にファッションとして着こなすと、意外とすんなり取り入れられると思います」

たしかに貴志さんが言う通り、従来のミリタリーとはデザインもカラーリングも異なり、新鮮なものが多い。アウトドアでも活躍してくれるので、ライフスタイルに馴染みやすいのも魅力である。

「ムー」オーナー・貴志さんチョイスのECWCS以降のテック系トラウザーズおすすめ5選

1.パタゴニアMARSのレベル6はゴアテックス

レベル5のソフトシェルパンツの上から穿くことを想定したオーバーパンツで、ゴアテックスを使った防水仕様となっている。2007年製の個体で、オーバーパンツならではの太めのシルエット。裾のスナップボタンとジッパーでシルエットを調整できるのも魅力。3万3000円

2.アメリカ軍のファイヤーマンパンツをリメイク

なんともインパクトのあるパンツは、米軍のファイヤーマンに支給されていたもの。防火性のあるパラアラミドを用いており、同素材のジャケットも存在する。デイリーユースできるようにベルトループを後付けしているのもおもしろい。内タグから1994年製。参考商品

3.1990年代に極小量生産されたECWCS のアグレッサートラウザーズ

ECWCSを象徴する名作ジャケットであるゴアテックスパーカーのセットアップとなるボトムス。ミリスペックのタグを見るとカモフラージュと表記されているが、無地であることから仮想敵国を想定した希少なアグレッサー仕様だと思われる。滅多に出てこない。価格未定

4.アメリカでもなかなか見つからないケミカルプロテクティブのライナー

1990年代に米軍で採用されていたケミカルプロテクティブユニフォームのライナーとして使われていたもの。内側のタグを見ると、特殊部隊向けのユニフォームであるCPUで使われていたもので、94年に生産された。起毛素材が使われており、独特な存在感。1万7600円

5.快適なソフトシェルを用いたパタゴニアMARSのレベル5

特殊部隊向けに作られていたパタゴニアMARSのレベル5は、アウトドアウエアでもお馴染みのソフトシェルを使っているのが特徴。また撥水性や防風性があるので、デイリーウエアとしても優秀だ。サイドにもカーゴポケットが付き、太めのシルエットが◎。3万800円

(出典/「Lightning 2025年1月号 Vol.369」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Pick Up おすすめ記事

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...