ジャパントラックショーで目からウロコな現在の日本のトラック文化を知る

幼いころに大型ダンプや消防車など、働くクルマが大好きだったという思い出を持っている人は多いと思うけど、そんなかつての思い出が甦ってくるイベントが横浜のパシフィコ横浜で開催された。「ジャパントラックショー」はその名の通り、働くクルマの祭典。車両からパーツ、それに働くクルマ専用の様々な機器の新製品を披露するイベントで、その内容は業界だけにとどまらず、一般の人たちに向けた展示で、世の中の「働くクルマ」好きを熱くさせるイベントなのだ。

働くクルマの「現在地」を知ることができるイベント。

モーターショーには行ったことがある筆者だが、トラックショーは初めての経験。トラックといえばいわば業務用のカテゴリーなので、身近な存在でもないし、難しい専門用語や専門的な機械が展示されているかと思いきや、行ってみてびっくり。

カスタムトラックや業界人ではなくても驚く先進の技術などが所狭しとお披露目されていて、業界人でなくても楽しめる内容で予想外の大興奮。

さらには普段見ることができない巨大トラックの運転席に座ることもできるので、会場に入ってすぐに童心に返ってしまったことはいうまでもない。

事実、週末には多くの家族連れなんかも来場して、巨大なクルマたちを見て触れて、大興奮して帰っていくんだそう。開催期間には5万人以上が来場すると聞いてさらに驚くと同時に、このカテゴリーを今までスルーしていたなんてと大反省。

乗用車と同じようにトラック業界も日々進化しているんだなと実感。そこにはコワモテのおじさんが転がしているクルマというイメージは皆無。最近では若い女性のトラックドライバーも珍しくないという現状にもうなづける。

物流業界の2024年問題やら、トラックドライバー不足というワードも飛び交う昨今だけど、ここに展示されるカッコよくスマートな働くクルマを見ると、トラック業界の見方が変わってくるんじゃない?

会場にはトラックの「今」を感じる車両が目白押し。

業務用の働くクルマには機能に特化した車両ならではの装備があって、それがまたカッコ良さだったりする。さらには最近では日本車だけでなく欧州車をベースにしたカスタムトラックなども人気で、トラックのオーナーや会社が仕事へのモチベーションを高めるために思い思いのカスタムをすることも珍しくないという。そんな世界があったなんて。まずは百聞は一見にしかずということで、会場の展示車両をチェックしてみる。

派手なボディカラーにカスタムペイントも施されたボルボのトラック。もともとエアサスを標準装備しているので、こういう着地した車高も可能。欧州車メーカーのボディを使って現代的にカスタムするのはユーロスタイルと呼ばれている。

会場にはDJブースを設けて音楽といっしょに展示するなんていうブースも。若者向けやストリート系といったカルチャーが働くクルマの業界にも存在。もはや地味なイメージの働くクルマはそこにはないのだ。

クロームパーツをできるだけ排除して漆黒のマスクにカスタムされるUDトラック。ホイールも当然ブラックをセレクトして統一感を出す。カスタムトラックも多様性の時代。

夜道でもかなり目立ちそうな全身パープルのミキサー車。クルマが派手になれば運転手も気分が上がる。普通車よりも塗る面積が大きいので全塗装するのも大変な作業なんだろうな。

1万cc超えも珍しくないトラックのディーゼルエンジンを間近で見ると、その巨大さに驚く。これは74万キロを走った三菱ふそうの2016年式エンジンをレストアした実物。メカ好きはこういう展示物に弱い(笑)

故障車をレスキューするレッカー車はクルマをけん引する装備だけでなく、ボディサイドに工具など、専門的なツールを収納するサイドトランクがあることをこの展示で知る。いっさい無駄なスペースが無いレイアウトはさすが。

オランダのダブルレッカー(2階建て)トレーラーは航空機に搭載するコンテナをそのまま積載できるという代物。コンテナ13台を一気に運べるんだって。しかし長いなこれ。

ドイツのケスボーラー社製のトレーラー部分だけというなかなかシュールな展示。トラックはヘッドよりも、トレーラー部分の開発に数多くのメーカーが存在している。というのも使用する目的に合わせて専門性が求められるから。ヨーロッパのメーカーは日本に数多く進出しているのだ。

土砂スライドトレーラーに多くの人が集まる。これはダンプ部分を上に傾斜させなくても積んでいる土砂をスライド排出できるという仕組みが売り。トラックの後ろのトレーラー部分は日々進化しているのだ。

工事中ではなくて、高所作業用トラックの展示。こういう機能美しかない特殊車両ってなぜか気になる。乗用車とはまったく違う価値観で見ていただきたい。

日本でもじわじわと勢力を拡大しているトラックヘッドのメーカーであるスカニア。スウェーデン発祥らしいデザイン性の高さと環境性能の高さがセールスポイント。このR450は1万2700ccのディーゼルエンジンで450馬力を発生させる。乗用車のスペックに慣れていると、この数値だけでも驚く。

6台積みのキャリアカーの大きさに驚く。4ドアのポルシェ・タイカンがさらっと積めて安全に運べちゃいますよという展示。積載するクルマをポルシェで統一するあたりに意気込みを感じる。

乗用車のチューニングやカスタムパーツをリリースするリバティーウォークがトラック用のカスタムパーツをプロデュースしているって知ってた? これはトラックをマットな質感で仕上げ、汚し塗装を施してミリタリースタイルでディティールアップしたモデル。こういうカスタムの方向性も存在する。

リバティウォークのトラックカスタムパーツ部門であるLB-TRUCKSが仕上げたモデルは走り屋を想起させるイメージで仕上げた意欲作。後部のトレーラーを合体させるときはリアウイングはさすがに外さないとね。

いわばトラック業界のモーターショーなので、乗用車のモーターショーのようにコンパニオンが展示に華を添えるなんていうブースも。巨大でふてぶてしいトラックと美女というアンバランス感が逆によろしい。

トラック専門のカスタムホイールなんてのも存在。乗用車のホイールとは比べものにならないほど存在感がある。乗用車のカスタムシーンだけでなく、働くクルマにとっても必須のパーツなんだと再確認。

ピンストライパーのKENTHEFLATTOP氏はイベント期間中、実車にライブペイントを敢行。ボルボのトラックヘッドにカスタムペイントを施し多くの人が足を止めていた。アメリカで生まれたピンストライプやレタリングのテクニックが日本で欧州車のトラックヘッドに反映されるという何とも感慨深い光景。

物販ブースでは往年のトラックドライバーには定番のアイテムを販売。ステッカーはトラックに貼る用に大きなサイズがあるっていうのがこのイベントらしさ。往年のトラック文化を知る。

ボルボのトラックの運転席にお邪魔。右ハンドル仕様で、内装も高級感たっぷり。一般的な乗用車と何ら変わらない。しかも現在ではオートマチック仕様がほとんどなんだって。フロントシートの後部は大人がゆったりと就寝できるベッドになっている。現在ではエンジンをかけなくても稼働するエアコンなどの快適装備も存在している。

EVの波はトラック業界にも。まだ長距離を想定したモデルは無いものの、電動のトランスポーターはこれから増えていくかもしれない。これはEVモーターズ・ジャパンの車両。実際の現場に投入されているのはハイブリッドカーが主流だが、技術がさらに進めば未来の働くクルマは次第にEVへとシフトしていくかもしれない。

会場の外には往年のデコトラも参戦。今や外国人にも有名な日本固有のデコトラ文化ということもあって、インバウンドも考えた展示なのかも。全身がギラギラであった。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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