フォード ラプターは悪路走破性を極限まで高めたハイパフォーマンスモデルの固有種。

ラプターと聞くとアメリカのステルス戦闘機であるF-22ラプターを想像する人も多いかもしれないが、アメリカ車の世界でラプターと言えばフォードのピックアップトラック&SUVのハイパフォーマンスモデルの名称である。そんなフォードのラプターは通常モデルとは違った思い切ったスペックが特徴。その歴史と種類、さらには新車価格やサイズまで紹介。アメリカ車はエコなEVを作る反面、昔ながらのハードコアなモデルもお好きなようで。

パフォーマンスに特化したスペシャルな仕様。

ラプターとは本来、猛禽類を意味する言葉、つまり肉食で、ときとして獰猛。そんなイメージを持ったクルマとして、初めてラプターの名前が冠されたのは2010年式のフォードF-150に始まる。

これはフォードのSVT(スペシャル・ヴィークル・チーム)が手がけたスペシャルバージョンで、F-150をベースにあらゆる部分に手を入れ、オフロード走破性を高めた仕様として登場した。その後、ラプターはミッドサイズのピックアップトラックであるレンジャーやブロンコにも登場し、フォード製のピックアップトラック&SUVのハイパフォーマンスバージョンとして現在も存在している。

その内容は徹底して足周りに手が入れられ、ハイパフォーマンスなショックアブソーバーや肉厚なオフロードタイヤ、それにそのタイヤを収めるためにフェンダー幅も拡大され、ボディ幅も拡大される。車高も通常モデルよりも高く設定され、オフロードでの走破性を格段に高めたモデルになっている。ジープで言うところのルビコンモデルのような存在だ。

いわば買ってそのままオフロードコースを走りに行けるモデルこそラプターなのだ。通常モデルのノーマルを手に入れて自分で同じようなカスタムをするよりも、メーカー純正で思いっきりカスタムされた仕様ははっきりいってリーズナブル。現在ではラプターのベースになる車種も拡大し、アメリカのオフロード派に、ますますその人気を確固たるものにしている。

フォードのフルサイズピックアップのF-150から始まったラプターの歴史。

2021年式のフォードF-150ラプター。通常のF-150とは違うこのモデルだけのフロントマスクに、太いタイヤを収めるためのオーバーフェンダーが標準で取り付けられる。Photo by Ford Motor Company

最初に登場したラプターはフォードの誇るフルサイズピックアップであるF-150。2010年モデルに設定され、ボディ幅も拡大された。

肉厚のタイヤの内側にはこのモデルのために開発されたFOXレーシング製のショックアブソーバーを搭載するなど、特別仕様の足周りでアップデートされたモデルだった。明らかに通常のF-150とは違う戦闘的な出で立ちが印象的。

フロントのエンブレムも本来のフォードのロゴであるブルーオーバルではなく、アルファベットになっているのも特徴になっている。

近年では2023年モデルにラプターの最強版といえるラプターRがF-150に設定される。これはエンジンにマスタング・シェルビーGT500に搭載される5.2L スーパーチャージャー付きV8を搭載し(通常のラプターは3.5L V6ツインターボ)、700馬力のピックアップトラックとして生まれた。もはやスペックはスーパーカーに引けを取らない。

ラプターの高い走破性に高出力エンジンを追加することで、ラプター史上、最強モデルになった2023年式フォードF-150ラプターR。アメリカ人が歓迎するV8エンジンを搭載して700馬力のパフォーマンスを発揮するスーパーピックアップだ。他のモデルにラプターRの登場はあるのか?

2019年にはフォード・レンジャーにも設定される。

ラプターの人気を受け、フォードのミッドサイズピックアップであるレンジャーにもラプターモデルが採用される。こちらも先に発売されていたF-150同様にオフロード走破性を高めたアップデートがされたまさにメーカー純正のカスタムモデルといったイメージに仕上がっている。2024年モデルでは3L V6ツインターボ(エコブースト)を搭載し、405馬力を叩き出す。スタイリングもF-150同様、専用グリルによって、ブルーオーバルではなくフォードのアルファベットエンブレムになっている。

現在ではブロンコにもラプターモデルが存在する。

ラプターはSUVにも派生。2022年モデルにはブロンコにも設定され、ノーマルで荒々しいスタイリングのブロンコ・ラプターが登場した。オーバーフェンダーで拡大されたボディや、フロントボディ下部にマッドガードを装備したシャシーなど、日常からレジャーまで、荒れ狂う道なき道を求めて走りたくなるスタイリングが特徴になっている。最新の2024年モデルでは418馬力を発生させる3L V6ツインターボ(エコブースト)を搭載する。

気になる現行モデルの新車価格やサイズ感は? 中古もあるの?

現在ラプターの設定があるのは3車種。それぞれの気になる新車価格はF-150ラプターは2023年モデルで7万6775ドルから。すでに2024年モデルのオーダーが始まっているレンジャーのラプターは5万5365ドルから。ブロンコ・ラプターは最新の2024年モデルから8万9835ドルからとなっている。いずれもそれぞれのモデルでもっとも高級モデルという位置付けになっている。

それぞれのサイズ感は、

2023年式フォードF-150ラプター 全長5908mm、全幅2199mm(サイドミラー含まず)、全高2026mm。

2024年式フォード・レンジャー・ラプター 全長5356mm、全幅2026mm(サイドミラー含まず)、全高1927mm。

2024年式フォード・ブロンコ・ラプター 全長4851mm、全幅2176mm(サイドミラー含まず)、全高1976mm。

と、どの車種も通常モデルよりは大きくなる。とくにF-150に関してはノーマルでもフルサイズボディになるので、ラプターモデルになるとその巨大さが顕著。日本ではいずれも並行輸入モデルでしか購入することはできないが、中古車もわずかに存在する。年式によって価格は変動するが、だいたい価格幅は600~1500万円。もはや普通のピックアップトラックというよりもスーパーピックアップとして存在している。どれもそれぞれのモデルのトップに君臨するモデル。スペックも価格もこれくらいぶっ飛んでるのがラプターなのだ。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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