本場アメリカのホットロッダーたちは、たった3時間開催のイベントにも集まってくる。【現地レポート】

アメリカでもホットロッドカルチャーが色濃く受け継がれているのが西海岸。乾いた空気と暖かい気候はヴィンテージカーには最適のエリアだ。そんなカリフォルニアで戦後すぐに生まれた、いわゆるトラディショナルなスタイルのホットロッドだけを集めたイベントが開催された。そこに集まるマシンたちに、アメリカのクルマ好きのコアな一面を見ることができる。

リヨン航空博物館の前は滑走路で開催される「HOT RODS ON THE TARMAC」

会場となったリヨン航空博物館の前は滑走路。格納庫にある博物館には第二次大戦で使われていた戦闘機や輸送機が展示され、そこにホットロッドが並ぶ

ホットロッドのなかでもとくにコアなファンが多いトラディショナルなスタイル。ベースとなるクルマはもとより、中にはカスタムするパーツまでも当時のヴィンテージパーツを全米中から探してくるなど、その情熱とこだわりは折り紙付き。そんな連中が集まるイベントがカリフォルニアはオレンジカウンティのジョン・ウェイン空港にあるリヨン航空博物館で開催された。

ここは第二次大戦で使われた戦闘機の実機を中心にハンガー(飛行機の格納庫)に展示される場所で、ホットロッド文化が生まれた戦後になぞらえて、当時の飛行機と、ノスタルジックなスタイルのホットロッドを同時展示するという、いかにもアメリカらしいイベント。普段は開けられることがないハンガーを全開にして、その前にホットロッドが並ぶ姿は圧巻。イベントの開催は会場の都合でたった3時間という短いものだったが、それでも多くの愛好家が自慢のマシンをここに持ち込んで、会場はノスタルジックな空間へと変貌。そのほとんどが自走やってくるから恐れ入る。

エンジンがむき出しになっているのは心臓部を自慢したいわけではなく、軽量化でエンジンフードを付けないから。これも昔ながらのスタイルだ

「クラシックカーでも走らせなければ意味が無い。しかも現代車両をも凌駕するスピードで」というホットロッド愛好家の情熱は、多くを語るよりも、咆哮するV8エンジンのサウンドが教えてくれる。旧きよき文化やプロダクツを愛する人たちの情熱は、こうして次の世代に受け継がれていく。

集まったホットロッドは戦前のモデルをベースにしたトラディショナルなスタイルの車両ばかり。ここまで時代背景にこだわるイベントは珍しい
イベント参加車両のほとんどが自走でやってきて、3時間ほどイベントを楽しんだら自走で帰路につく。滑走路を走ることができるだけでもかなりの醍醐味。第二次大戦期の飛行機たちをバックにまた来年の再会を誓う。こうして文化が継承されていく

会場で見かけた、気になるホットロッドを紹介!

ルーフが完全に作り直されている1939年式リンカーン・ゼファー。大人っぽく低くするため、チョップではなく新造され、フロントのウインドシールドは2ピース化。仕上がりが完璧すぎてこれがノーマルかと思うほどだ。

オリジナルのスタイルを残したままエンジンは怪力仕様になった’40年式フォード・コンバーチブル。’40年式フォードは’32年式に次ぐホットロッドの定番ベース車両として人気。オリジナル重視のスタイルも雰囲気あり。

大胆にルーフをチョップして低いスタイルを手に入れた’37年式フォード。個性的なティアドロップ型のヘッドライトはこれが純正。戦前のフォードに見ることができる手の込んだデザインはそのまま活かすのが正解である。

’32年式フォード・ロードスターをベースにフェンダーをチョップしたベーシックなホットロッド。いわゆるトラディショナルなホットロッドといえばこういうスタイルが思い浮かぶほど正しい姿。

’40〜’60年代にレースに出ていた車両で、東海岸の博物館に展示されていたという’40年式フォードを所有するクレイグ。レースに出ていただけに、心臓部は当時からマーキュリー製のフラットヘッドに換装済み。

イベントのキュレーターだったオールドクロウ・スピードショップのボビーはビュイックのエンジンに換装した’31年式フォード・ロードスターを持ち込む。

ホットロッドのベース車両としてはフォードが一般的だけど、少数派といえご覧のシボレーベースも存在。これは’33年式シボレーのクーペ。この時代のシボレーはV8ではなく直6エンジンが主流だった。

2トーンペイントで見た目も華やかに仕上げている’36年式フォード・クーペをベースにした1台。低い車体とむき出しのエンジンで戦闘的なスタイルに。ホイールキャップは’57年式キャデラックから流用している。

フォードの上位ブランドであるマーキュリーをベースにするホットロッドも存在。これは’40年式をベースに当たり前のようにチョトップされている。心臓部はマーキュリー製のフラットヘッドを積む。

1951年にトムとフェリックス親子がビルドしたフォルナチャーリ・アダムス・レイクスターはエルミラージュのスピードトライアルにも出場していた歴史あるベリータンク。こちらが現オーナーのエド。

(出典/「Lightning2022年11月号 Vol.343」)

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Pick Up おすすめ記事

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...