釣果だけでなくスタイルも楽しめる“オールドルアー”の世界。その市場価値とは?

遊ぶフィールドは海、川、湖。そして獲物は小物から大物まで実に幅広い釣りの世界。そんな釣りの世界にもヴィンテージの道具にこだわるファンが多数存在する。なかでも今回はバスフィッシング愛好家なら誰もが知る「ヘドン」のルアーをピックアップする。

「レトロム」オーナー・柘植昭人さん

オールドルアー好きが高じてオールドルアーの販売をするだけでなく自ら名作の復刻もてがける。また、自身のブランド「MAEYAMA B.A.S.E」を立ち上げ、ウェーダーやフローター、カヌーなども作るなど趣味を仕事にする粋人。販売は主にネットやイベント出店だが、不定期で愛知県豊田市にある倉庫型ショップ「レトロム」もオープンする。店舗のオープン日や問い合わせはウェブをチェック。

【DATA】
RETROM
http://retrom247.com/mt

ヴィンテージではなくオールド。オールドルアーの世界とは?

タックルボックス(もちろんこちらもオールド品)に美しく並べられたヘドンの歴史的名作のひとつラッキーサーティーン。オールド好きの中でも実際に使って遊ぶ派とコレクション派に分かれるそう。なお、オールド(1980年代以前)といっても現在のものと比べて釣果が劣ることは特にないので、かつて少年時代に使っていた懐かしの品で釣るのも一興だ

釣りは長い歴史を持つ世界だけあって当然ヴィンテージの愛好家も多数存在する。ちなみに釣りにおいてはヴィンテージ ではなく「オールド」と表現される。オールドといっても釣りのジャンルは多種多様で、バスに限ってもロッドやリール、ルアーも各種メーカーがあって一度じゃとても紹介しきれないので、今回はまずオールドルアー界の王様「ヘドン」をピックアップしてみよう。

ヘドンは創業100年を超える老舗で創業当初より画期的なルアーを次々と開発し、トップウォーター(浮力があり水面や水面直下のバスを狙うルアー)の元祖として知られるメーカー。現在もブランド名は存続し新作もリリースされているが、1984年に経営不振のため他社に買収されたこともあり、愛好家の間では1984年以前を「オールド」と呼ぶそう。そんなオールドタックル&ルアーの世界に魅了され、’90年代半ばより自身のコレクションや国内外で仕入れたギアを扱う「レトロム」の柘植さんに話を伺った。

「オールド屋さんと呼ばれる専門店もかつてのバスブームの頃は結構ありました。今はそこまででなないですが、日本でも愛好家の方はいてオークションや個人売買は盛んに行われていますよ」

専門店は姿を消したがネットでは根強い人気。

日本における’90年代半のブームの終焉とともにオールド専門店もほとんど姿を消し、2000年代、オールドルアーは底値と言われるほど価格も下落した。

「今はピーク時に比べても高いものがあったり安いままだったりで全体的な傾向というのはひと言で言えない状況だと思います」

カタログやコレクターズブックなど貴重な資料も豊富に揃っている。ヘドンが1960年代に出していたカタログと手前の黄色い表紙の冊子はヘドンの世界的コレクター、クライド・A・ハーヴィンが1977年に作ったコレクターズブック。ヘドンの歴史に詳しくアイテムの鑑定時に役立つ。500冊しか作られなかった激レア本で現在はこの本も市場に出回ることもほぼない

単に年代が旧いとかレア度だけでなく、ハンドメイドで作られていただけに、塗装の仕上がりの違いによって同じモノでも時に数万円の価格の差が生まれることも。もはやここまでくるとコレクターの世界なのでよほど好きでなければ立ち入ることはないだろう。

ただ、スーパーレアなモノでなければ現行品と同程度か少し高いくらいで購入することも可能。なお、釣果についてはオールドも現行品も変わらないので、本誌読者諸兄が少年時代を過ごした’80年代のブームの頃に使っていたあのルアーでバス釣りを今一度、なんて思う人にはオススメだ。

コレクターが大量に放出することもあるためか箱付きのデッドストックも多数。もちろん箱入りの方が本物とわかるし年代も特定できるので価値が高い。箱のデザインやロゴマークによって年代が特定できるので、それもコレクターや愛好家にとっても重要なポイント

市場価格を知る!

そこまで旧い年代やレア度などにこだわらなければ安いモノだと1000円台〜3000円台で購入可能。歴史的なモノになると数万円〜10万円程度のものもあるし、なかには、人気モデルのプロトタイプやイレギュラーカラーなど生産数が少ないものになると、もはや価格はあってないようなもの。そこまで行くと絵画などのアート作品と同じような領域なので素人は手を出さない方が無難だ。

ザラスプーク

ヘドンが生み出した名作・ペンシルベイトのザラスプークの1stモデル。シンプルを極めたフォルムはまさにスタンダード。1940年代。2万5000円

同じくザラスプークの1stモデルだがこちらは継ぎ目である首元が通常のシルバーではく赤く塗装された通称 ”レッドネック” と呼ばれるスーパーレアモデル。ASK

こちらもザラスプークだが1978年から他社に買収される’84年まで製造されていた最終期のいわゆる3rdモデルのレアカラー。12万円

1980年〜1984年の4年間のみ作られたザラスプーク3rd。太めのファットボディに骨柄が特徴だがこのホワイトカラーは圧倒的に生産数も少ないレアモデル。20万円

1978年〜’84年まで発売された3rdモデル。通称 “ソリザラ” の通常カラー。1万円

ビッグ バド

こちらもヘドンの名作として知られるバドワイザー缶をルアーにしたビッグバド。当初はバドワイザー社のノベルティとして配られた初期モデル。’70年代。3万円

同じビッグバドだがこちらは目が白い。こちらが広く流通したスタンダードなタイプ。5000円

名作ビッグバドの派生系でカナダのビールLabatt’sの缶をあしらったタイプ。1970年代。ASK

ラッキーサーティーン

1920年に誕生し、いまだに作り続けられている名作中の名作、ラッキーサーティーン。世界で最も使われているカラーリングでレッドヘッドと呼ばれる。5000円

ラッキーサーティーンだが、こちらはブラックボディにホワイトヘッドという非常に珍しいカラーリング。1940〜’50年代製。ASK

ウンデッドスプーク

ヘドンの代表作のひとつウンデッドミノーがデビューしたのが1928年。それをプラスチックで再現したのがウンデッドスプーク。こちらは1980年代初頭の後期モデルのレアカラー。4万5000円

これもヘドンを代表するダブルスイッシャー、ウンデッドスプーク。こちらは恐らく書き忘れによって生じた目がないエラー品。だが今となっては超レア。ASK

ウンデッドミノー

1928年に発売された「#140SOSウンデッドミノー」をスミスというブランドが1980年代に復刻したモデル。復刻ながら生産数が少なく今や希少モデル。6000円

かつて木製で作られていたSOSウンデッドミノーがプラスチックで復刻されていなかったことから柘植さんが型から起こして作った復刻モデル。5000円

マグナムヘッドプラグ

ビッグサイズで素人には扱いづらいマグナムヘッドプラグ。1970年代に復刻されたモノだがカタログ未掲載のレアカラー。5万円

ビッグヘッド

丸い小魚のようなフォルムのクランクベイトのビッグヘッド。1970年〜’80年代製。レアカラー。3万5000円

210サーフェイス

その形状から“エリマキトカゲ”とも称される210サーフェイス。1975年と’77年のカタログにしか掲載されなかった短命モデルだが、今でも人気がある。1万円

バスフィッシング好きなら誰もが知る老舗ブランド「ヘドン」。日本では90年代半ばのブーム時にできたオールド専門店もほとんど姿を消したが、ネットオークションやネットショップでは未だに多数の在庫が流通している。レア度を求めなければ安いモノも簡単に見つかるので始めるなら今がおトクかも?

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「Ligthning 2022年1月号 Vol.333」)

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