ヴィンテージレッドウィングの魅力とは? 三宿の名店「ホープスモア」でエイジングの楽しみ方を聞いてみた。

新品のブーツ履き込んで、一からアジを出すのもエイジングの楽しみなら、ヴィンテージブーツでエイジングを楽しむ方法だってある。今回は、日本屈指のヴィンテージブーツ専門店、ホープスモア代表の福嶋さんに、ヴィンテージの中でもレッドウィングに焦点を当てそのエイジングの楽しみ方を教わったぞ。

「ホープスモア」代表・福嶋紀彦さん

ブーツ好きが高じて、2010年に東京・三宿にユーズドブーツ専門店「ホープスモア」をオープン。ヴィンテージ・レッドウィングの知識の深さはまさに世界有数で、ショップには日本はもとより世界から人が訪れる。

【楽しみ方①】年代によって全く違うデザインを楽しむ。

1984年のこちらのモデルもオロラセットだが、ゴールドの色調が強い。この後、’90年代に向かいにつれ、赤が強くなる

「ホープスモアでは、1990年代のレッドウィングをメインに、3000足近くのストックがあります」と福嶋さん。多くの旧いレッドウィングを見てきただけあり、その知識は相当なもの。

「当時のデッドストックなども扱っていますので、それを買って履き込むのも楽しいですよ。いまでは手に入らないモデルや、いまとは革色や革質の違うモデルもありますから、昔のモデルならではのエイジングが楽しめると思います」

【楽しみ方②】アイリッシュセッターで実証! オロラセットは年代でこんなに違う!

「一口にオロラセットと言っても、黄色がかった色味のものや、赤の強いものもあり、バラバラなんです。こんな違いに注目するのも楽しいですよ」と福嶋さん。

ハンティングブーツとして1952年に発売された8インチ丈の♯877の人気を受け、6インチ丈でリリースされたのが♯875。当時のオロラセットはゴールドの色調が強く、そのカラーがアイリッシュセッターの由来ともなるのだが、オロラセットレザーは年代や個体によっても色の振れ幅が大きく、オレンジがかったものや赤茶が強いものまで、様々存在している。難しいことは考えず、自分好みのオロラセットを手にしてみるのもいいかも。

【楽しみ方③】エンジニアブーツ(PT91)に見る、茶芯の違いの面白さ。

♯2268エンジニア(PT91)の茶芯の違いについてみていきたい。上の2足が’94年の♯2268、下の2足がともに’98年の♯2268。明らかに革質と茶芯の出方が違うのがわかるだろう。福嶋さんによれば、通常、レッドウィングの革はS.B.フット社の革を使うが、’90年代前半には別のタンナー、フィスタ—フォーゲル社の革を使っていたという。上下ともに、左の写真が茶芯の出た状態だが、一口に茶芯と言っても、出方や風合いは全く異なるのだ。

いわゆるPT91前期と言われる時代の’94年3月の♯2268。この革は フィスタ—フォーゲル社の革の可能性が高い。同社は妊娠・出産をしていない牝牛の革(フェファレザー)の革を使っており、一旦茶に染めてから黒に染めたと思われる。その証拠に右の未使用品のつま先からは、うっすらと茶が覗き、左も擦れて茶が出たというより、表面の黒が退色し、下地の茶が出てきた感じ
こちらはPT後期の刺繍タグが付く’98年の♯2268。これが、一般的に見られるPT91の茶芯。これは、レッドウィングのタンナー、S.B.フット社のもの。こちらはステアハイドを使用しており、光沢感に違いが出るのは、元の革が違うからだと思われる。何が茶芯か、という定義は非常に難しいが、一度茶に染めているフィスタ—フォーゲル社の革は、紛れもなく茶芯である

「茶芯が多いということでPT91は人気ですが、’90年代前半と後半とでは、明らかに革質が違い、芯の出方が違うんです。調べたところによると、どうやら’90年代前半の革はタンナーが違うらしい。ブーツを履くのも楽しいですが、こうした謎を調べるのも楽しいですよ(笑)」

▼こちらの記事も合わせて読みたい!

エイジングこそ正義!カッコいいブーツを作るためのお手入れの基本。レッドウィング875で実践!

エイジングこそ正義!カッコいいブーツを作るためのお手入れの基本。レッドウィング875で実践!

2023年02月13日

編集部員4人が体を張って検証! 「レッドウィング」の4大定番ブーツで対決してみた。

編集部員4人が体を張って検証! 「レッドウィング」の4大定番ブーツで対決してみた。

2022年12月06日

どんな種類が人気? レッドウィング(RED WING)の定番モデル5選と洒落者たちのコーデを拝見!【2023年最新版】

どんな種類が人気? レッドウィング(RED WING)の定番モデル5選と洒落者たちのコーデを拝見!【2023年最新版】

2023年01月23日

(出典/「Ligthning 2021年12月号 Vol.332」)

この記事を書いた人
モヒカン小川
この記事を書いた人

モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

Pick Up おすすめ記事

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...