絶滅危惧?! 旧きよき時代が生んだ金張り眼鏡フレームの普遍性と魅力とは?

1980年代頃を境に数が激減したという金張りのフレームは、独特の雰囲気を宿す色褪せないプロダクトの代表格。グローブスペックスの岡田哲哉氏が厳選する古今東西の傑作からその知られざる真の魅力について検証する。

お話を伺ったのは・・・「グローブスペックス」代表・岡田哲哉さん

大学卒業後、都銀勤務を経て、大手眼鏡販売会社に入社。1998年にグローブスペックス設立。代官山の店舗がアイウエアの国際展「MIDO」にて眼鏡店世界一としてベストアワードを受賞した。

年代を経て自然と発するくすんだ金の趣。

国内屈指のアイウェアのスペシャリストとして、その名を広く知られているグローブスペックスの岡田哲哉氏にアイウェアのエイジングに訊ねると、このような答えが返ってきた。

ヴィンテージのフレームを完璧な状態でレストアすることで知られている、ザ・スペクタクルのコレクション。上から順に/7万1000円、12万1000円、12万1000円

「まず第一に言えることは、メガネの世界で経年変化がポジティブな印象として受け入れられることはあまりないかと思います。なぜなら、レンズはさておき、フレームは消耗品であってはなりません。着用していく中で曲がってしまったり、汗で酸化してしまうことは、どちらかと言えば、ネガティブな話に聞こえるものです。そんな中、経年変化がプラスに捉えられるのが、“金張りのフレーム”でしょう」

ヴィンテージで見かけられるブリッジの彫金。第一次世界大戦後に職を失ったジュエリーの職人たちが腕をふるって施したもの

仮に未使用のデッドストックであっても自然と金属の色味がくすむ金張りのフレームは、ギラつきがなく、むしろ落ち着いた印象を与えてくれる。

「かつてはポピュラーなスタイルであった金張りのフレームは、生産コストの都合上、ほとんど作られることがなくなりました。私のブランドであるザ・バラックスでもヴィンテージ特有の雰囲気を再現しようと試みたところ、非常に手間がかかりました。時間をかけて何度も作り直すことで、ようやく納得がいく仕上げに辿り着くことができました」

ザ・スペクタクルのコレクション。金張りのフレームはその中でも特別な存在として珍重され、さまざなスタイルが展開。今の時代にはない雰囲気が味わえるのが醍醐味である。46万7400円

個性重視で選ぶならフィンチという選択もアリ。

主に老眼鏡として使われていたフィンチ(鼻メガネ)にも金張りフレームが存在する。今の時代のアイウェアでは見かけられない、テンプルがないデザインが個性的に映る。こちらに並ぶヴィンテージの品々は、岡田氏が先日海外を訪れた際に入手したもの。旧い書物を彷彿させる独特の眼鏡ケースも、このフレームに勝るとも劣らない雰囲気を放っている。

実際にフィンチを掛けるとこのようになる。完全な実用品として作られたアイテムではあるが、今ならアクセサリー感覚で楽しむのが正解だと言える。

岡田氏が手掛けるグローブスペックスではヴィンテージのフィンチの購入が可能である。こちらの2点はいずれも金張りフレーム。ブランド名は不明とのことだ。ディテールのバリエーションが豊富なので自分好みの一本を探し出そう。各2万5000円

ミリタリースタイルを踏襲する日本発のプロダクトとは?

岡田氏が自らデザインを手がけるザ・バラックスは、1940~70年代にかけてアメリカ軍に支給していたヴィンテージフレームをモチーフに展開するブランド。いつの時代でも色褪せないタイムレスなプロダクトを発信している。デザインの対象は、新人から上級士官が愛用したものまで実に幅広い。

THE IRONSIDE 各3万円

THE DIXIE 各3万円

こちらの新作2型は、1960年代の金張りフレームの色味に近づけながら、サイズをコンパクトに設定することでオリジナルと異なるバランスに仕上げている。

岡田氏がザ・バラックスの金張りフレームを開発するために参考にしたサンプル。1960年代当時の雰囲気が何よりの魅力である

近年、あまり注目されてこなかった金張りメガネだが、いま見ると実に新鮮。どんなファッションに合わせるか、なかなか楽しいプロダクツだ。

【問い合わせ】
BALL Watch Japan 
TEL03-3221-7807
http://www.ballwatch.com

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「Lightning 2017年12月号 Vol.284」)

この記事を書いた人
ランボルギーニ三浦
この記事を書いた人

ランボルギーニ三浦

ヴィンテージ古着の目利き

全国的に名を轟かせていた札幌の老舗ヴィンテージショップに就職。29歳で上京。Lightning編集部、兄弟誌・2nd編集部で編集長を務めた後、現在は、Lightning副編集長に。ヴィンテージ、古着の知識はその道のプロに匹敵。最近はヴィンテージのロレックスが最大の関心事で、市場調査も日課のひとつ。ランボルギーニ三浦の由来は、もちろんあの名車。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

Pick Up おすすめ記事

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...