2ページ目 - バイク乗りに! 過酷な環境に! 機能美の傑作「フライトジャケット」は“ゾーン”で選ぶ。

ヘビーゾーン(摂氏-30℃~‐10℃)【米陸軍航空隊/米空軍】

B-9から脈々と進化を遂げる極寒冷地衣料の歴史。米軍初のダウン素材を使ったB-9。そこから米軍が使う極寒冷地用のアウターはどのように進化していったのか? その代表的モデルを追っていこう。

  • 【ヘビーゾーン(米空軍)】B-3→B-7→B-9→N-2/N-3→N-2A/N-3A→N-2B/N-3B

TYPE B-3

1920年代後半まではオーバーオール式のフライングスーツが主流であったが、1930年代に入ると羊革を使用したタイプB-3が採用される。それは内側が長い毛足で覆われており、ヘビーゾーンに耐えうる優れた保温力を持っていた。写真は「モーガン メンフィスベル」が再現したもの。

TYPE B-7

実物はわずか1年のみの生産というとで、ミリタリーファンの間では希少性の高いフライトジャケットとして知られるB-7。1941年に米陸軍航空隊がアラスカなどの極寒冷地での使用を目的に開発したモデルで、寒さにより羊革表面のひび割れ防止のためノーコーティングのムートンが使用されていた。こちらも「モーガンメンフィスベル」が再現したもの。

TYPE B-9

極寒冷地衣料として登場したタイプB-9は、大戦中の皮革不足に悩まされた羊革素材のタイプB-7の後継として開発された。米陸軍航空隊での採用は1943年から1944年までの1年間と極めて短い。また計3回、3つのコントラクターが納入していた。前身頃の上部にデザインされたハンドウォームポケットや、その下にあるフラップ付きポケットなど、先代モデルのB-7から進化。とはいえまだラフな作りだ。

これはその最初の納入業者であるエディバウアー製のもの。いわずと知れた世界で初めてダウンジャケットを作った会社である。ダウン素材がたっぷりと詰め込まれたライニングは、見るからに暖かい。

こちらは、米軍がB-9を2回目に発注した「リード・プロダクツ社」のもの。このコントラクターはN-2やN-3、B-15Aなどを製造しており、クオリティの高い作りが特徴。

そしてこのB-9は3回目のコントラクターを務めた「グリーン・ホルツ社」のもの。基本的なディテールは他のメーカーと変わりがないが、ライニングの生地が明るい発色が特徴。

TYPE N-2

ヘビーゾーン用のフライングスーツとして陸軍航空隊が開発したN-2は、デュポン社が開発した当時の最新素材であるナイロンを採用し、コットン製フライトジャケットからの脱却を図った。高高度で紫外線を浴びるため、ナイロ
ンが日焼けを起こしたものを多くみかける。1945年にN-3と時を同じくして登場した。その後、N-2A、N-2Bとセパレートしたフードは最終形まで引き継がれる。

TYPE N-3

陸軍航空隊が採用したヘビーゾーン用フライトジャケット「N-3」。パイロットが使用したN-2とは異なり、主にアラスカなどの補給地で使用されていた。コヨーテファー付きのムートンフードなど、デザイン面で民間衣料の防寒着に多大な影響を与えた機能美が目を引く。こののち、1950年代初期に採用された「N-3A」を経て、最終形「N-3B」が登場する。

TYPE N-3B

コストダウンと堅牢性を高め、約40年という長期使用を達成した名品がこの「N-3B」。極寒地仕様フライトジャケットの元祖とも言えるN-3、その後に採用されたN-3Aの後継としてN-3Bがアメリカ空軍に採用されたのは1950年代半ばのこと。素材はナイロン素材を使い、ライニングには分厚いウールパイルを採用。寒冷地での着用を目的とするため、防寒、保温のために二重にしつらえられた前合せが特徴。

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抜群の保温性能と進化した現代版の寒冷地衣服「LEVEL 7」。

ここまで見てきたフライトジャケットの系譜。そんな様々な環境に対応すべく進化してきたアウターの最終形態ともいえるのが、「米軍」が現在採用している「LEVEL 7 ECWCS Gen.3」だ。

米軍が誇る最新システムのECWCS(拡張式寒冷地被服システム)。その最高位に位置するのがレベル7だ。別名エクストリームコールドパーカとも呼ばれ、厳しい環境下でも浸水せず、兵士の行動を妨げないよう柔軟性に富み、軽量に作られたヘビーアウターとなっている。こちらは実際に米軍のECWCS装備を手がけている指定工場のプライベートライン「FR-HQ」が手掛けた、実物同等のレベル7だ。

軽量で堅牢、そして暖かい最強アウター。着ぶくれする心配もない。

襟元にフードが備わり、突然の天候変化にも素早く対応可能。またヘルメットを着用していても使用可。

ライニング素材にはプリマロフトを採用することでダウンにはない軽量性と利便性を実現させている。

ドローコードを装備しており、フィッティングを高めるだけでなく、冷気の流入をしっかりと防ぐ。

袖部分はベルクロにてフィッティングを調整。アウトドアウエアのようなディテールとなっている。

ジッパーを装備し、しっかりものを収納できる。ハンドウォーマーも兼ねるので大き目な作りだ。

地上以上に極寒である空の上。パイロットを守るために開発されてきたフライトジャケットは最先端の技術の結晶であったと言える。そこで培った技術力が、今現在米軍で採用されているミリタリージャケット「レベル7」につながっている、とも言えるだろう。

奥深きミリタリージャケットの世界。中でもフライトジャケットの機能美には、男ならば誰しもが惹かれること間違いない。

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2023年07月17日

(出典/「Lightning別冊 街のミリタリースタイル」)

この記事を書いた人
ADちゃん
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ADちゃん

ストリート&ミリタリー系編集者

Lightning本誌ではミリタリー担当として活動中。米空軍のフライトジャケットも大好きだけど、どちらかといえば土臭い米陸軍モノが大好物。そして得意とするミリタリージャンルは、第二次世界大戦から特殊部隊などの現代戦まで幅広く網羅。その流れからミリタリー系のバックパックも好き。まぁとにかく質実剛健なプロダクツが好きな男。【得意分野】ヴィンテージ古着、スケートボード、ミリタリーファッション、サバイバルゲーム
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