99gの超軽量ドローン『HOVERAir X1 Smart』は自撮りカメラとして最高!【動画あり】

ネットのクラウドファンディングの広告に出てくるユニークな超軽量ドローン『HOVERAir X1 Smart』のこと、気になっている人は多いのではないだろうか? 発売前に、この超軽量ドローンをお借りできたので試してみた。同社が『AI飛行カメラ』と言うとおり、動画の自撮りに最適なユニークなデバイスだった。

筆者はドローンに対してネガティブなのだが……

よく、「タクタさんはドローンお好きですよね?」と言ってドローンのレビューを打診されることが多いのだが、実は苦手である。

筆者は’99〜2013年頃までラジコン飛行機・ヘリ雑誌の編集長をやっていた(途中携わってない時期も数年あります)こともあって、空モノデバイスには詳しいのだが、私が楽しんでいたのは自分で操縦するのが難しくも楽しいラジコン飛行機……ということもあって、「簡単に飛ばせる」という触れ込みのドローンには興味がなかった。

ラジコン飛行機・ヘリを楽しむ人は、一歩間違えれば墜落する、危険なものだということをよく知っていたので、河川敷などの安全な場所で、周囲の方に迷惑をかけないように楽しんでいた。自分たちで厳しいルールを課して、安全に楽しんでいたのだ。

そこにドローンが登場して、多くの人が危険な場所(ラジコン飛行機・ヘリを楽しむ人にとっては、市街地や人の頭上などで飛ばすなんてあり得ない!)で飛ばして、数多くの事故が起こり、数多くのルールができてしまった。いまや、通常のサイズのラジコン飛行機でさえ登録が必要になってしまった。

ラジコン飛行機雑誌時代の筆者。全国の河川敷には、このような安全に飛行機を楽しめるラジコン飛行場が一般の方に迷惑をかけないように秘かに存在している(河川管理者の占用許可を得て運営されていることが多い)。

というわけで、ラジコン飛行機趣味を楽しんでいた者としては、ドローンには複雑な感情を持っていて、つまり「好きではない」のである。

ブラシレスモーターで高速回転するプロペラで怪我した人も多く知っているから、近くで飛ばされると思わず身構えてしまう。

ラジコン飛行機業界全体としては、ドローンが普及する前に業界に取り込んで、自主的なルール化などを早く進めるべきだったのではないか……とも思うが、業界として古く高齢化が進んでたラジコン業界が、ドローンの普及をコントロール出来たかというと、多分無理だったろうとは思う。

99g以下で規制にかからないトイドローン

という筆者のスタンスを説明したところで、HOVERAir X1 Smartについて解説を始めよう。

ZERO ZERO ROBOTICSは2014年創業の中国のドローン、AI飛行カメラのメーカー。同社は、2022年にHOVERAir X1という超小型のAI飛行カメラを作ったが、超小型とはいえ125gあったので、日本では前出の航空法の制約に引っ掛かってしまう。

今回のHOVERAir X1 Smartは、日本向けに特別に作られたもので、バッテリー込みで99g。航空法の制約には当たらない。

簡単に言うと、100g未満はトイという扱いだ。では、どこでも飛ばせるのかというとそうではない。航空法の制約にはかからず、届け出などは不要だが、公園などで『ドローン禁止』と書いてあれば、漠然とした『ドローン』という括りには入るので飛ばせない。

『99gだから飛ばしていい』という認識でうかつに飛ばすと、早晩また規制が厳しくなるだけだ(そもそも、この規制は200gだったのが100gに引き下げられた経緯もある)。

パッケージには『地表の高度差が大きい場所で飛ばさない』『水面の上空で飛ばさない』などの注意事項が書いてあるが、輸入元には『人の頭上で飛ばさない』『人口密集地で飛ばさない』『公道で飛ばさない』『重要文化財の近くで飛ばさない』など、前述の日本の事情を加味した注意書きを加えて欲しいと思う。

99gということで、当たっても怪我をする可能性は低いが、不測の方向から当たると目などを怪我する可能性もあるし、風などでコントロールを失った機体が、クルマやバイクなどに当たると大きな事故を誘発する可能性もある。

くれぐれも人に迷惑をかけない、安全な場所で飛ばしていただきたい。

コンパクトで軽量、非常に良く出来た設計

前置きが長くなってしまったが、本機は実によくできていて、楽しい。そして、『ドローン』ではなく、『AI飛行カメラ』とアピールするメーカーの意見もよく分かる。

パッケージに小さなローターが入っていて、箱を開ける時にこれがクルクルと回るのが面白い。

本体は本当に小さくて、よくこれで飛行性能を確保できるな……と感心する。4枚のローターは鳥カゴのようなフレームに覆われていて、何かに当たってもローターが壊れるところはなさそうだし、人に当たっても怪我させる可能性は低そうだ。

筆者がお預かりしたセットは、ローターふたつ(ひとつは最初気付かなくて写真に写っていない)と予備のバッテリーがひとつ付属しているが、予備バッテリーに関してはセットによって含まれる数は違うようだ。

バッテリー容量は690mAhで、約10分のフライトが可能とのこと。飛行時間が30秒の『ズームアウトモード』で使って約20本の動画を撮れる……とサイトにはあるが、実際には設定したり、スマホに画像を転送したりするのにもバッテリーを使うので、予備のバッテリーは絶対あった方がいい。

iPhone 15 Proと比べて、このぐらいのサイズ感。まさに、『空飛ぶ自撮りカメラ』という具合だ。持ち運びも簡単で、旅行のバッグにだって入れておける(移動時の保護のために、筆者はタッパーウェア的な容器を用意した)。

ローターの直径は実測で42mm。翼端渦に対する工夫なのか翼端が広がって少し捩れた形状になっている。超小型のブラシレスモーターにマウントされており、ケージの枠のひとつに沿ってケーブルが走っている。

メインカメラは、前から下方へ90度動く。静止画で1200万画素(つまり、iPhoneの一般的な画像と同じ)、HDR時は500万画素。動画の最大解像度は、2704×1520@30fpsとなっている。

下面には距離センサーとカメラらしきものが見えるが、それ以外の方向にはセンサーはないので、たとえば上方に木の枝や、天井があるとぶつかることになる。

操作ボタンは、電源を兼ねたメインボタンがひとつと、モード切り替えボタンがある。

最初に必要な操作は、メインボタンを長押しして電源を入れ、モードを選択し、メインボタンを押してスタート(この際、利用者の顔を見せる必要がある)、それだけ。実に簡単だ。

スマホにアプリを入れてペアリングして、より詳細な設定を行ったり、画像を転送したりできる。ただし、飛ばす時に、通常はスマホを操作する必要はない。

飛ばしてみるとあっけないほど簡単

前段が長くなったが、飛ばしてみよう。操作は実に簡単。

ご覧のように、ボタンを押したら浮かんで、顔を認識して追従してくれる。

そして、本体の下に手を差し出すと、その上に降りてくれる。実に簡単。

ちなみに、緊急停止したい時は掴んで裏返しにすると良いらしい。これも動作として分かりやすい。

もうひとつモードを試してみよう。

ズームアウトモード。撮影しながら後退&上昇する。

なんか、某旅行バラエティ番組のオープニングのような映像が簡単に撮れる。散々、ドローンに対して苦言を垂れた後に言うのは少し気恥ずかしいが、これは楽しい。

他のモードも、いろいろと試してみたいところだが、記事も長くなってきたので、ひとまずはこのへんで。続きはまた後日。

気軽に飛ばせ過ぎてトラブルが起こらないかと心配がないわけではないが、便利なのは良いことだ。大変、楽しくて、飛ばしやすい『飛行カメラ』だと思うので、ぜひみなさん気をつけて楽しんでいただきたい。

くれぐれも、勝手に他人の頭上で飛ばしたり、人の多いところで飛ばしたりされませんように(頭上や近くで飛ばされると、非常に不愉快に感じる人も多いので注意)。

(村上タクタ)

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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