オリエンタル文化が詰まった美しきペルシャ絨毯の世界。

ヴィンテージという概念が存在する世界には、必ずコレクターが存在する。そのカテゴリーは細分化されており、デニムのようにメジャーなものから知る人ぞ知るニッチなものまで、奥深い世界が広がっている。そんな様々なジャンルのコレクターを、テーマごとにフィーチャーし、膨大なコレクションの中から厳選した逸品を毎号ここで紹介していく連載企画。今回は、ペルシャ絨毯にスポットを当てる。

織也スィーナ|1983年生まれ。イラン出身。イラン人の父と日本人の母を持つ。5歳の時に来日

奥深いペルシャ絨毯。

自身のキャッチコピーを“畳の上のペルシャ絨毯”と表現するように、日本とイランの文化が混ざりあった空間で育ったことが、今に繋がっていると回想する織也スィーナさん。

大学卒業後、自身のルーツを追求するためにイランで兵役に務める。

退役後に、日本の一流商社に入り、中東エリアの駐在員として活躍。2017年に退職後、輸出入業で独立。家業で40年続くペルシャ絨毯卸売業を事業分離し、日本で曲解されたペルシャ絨毯をモダンなライフスタイルに提案するFARSHINAを立ち上げる。

現在はペルシャ絨毯の輸入や製作を行い、TRADMAN’S BONSAIやOLDMOUNTAINなどの名だたるブランドと協業。

ペルシャ絨毯の起源は、今のイランがあるペルシャ帝国にて約2500年前に生まれた。伝統的な製法は今も変わらず、品質の高さや一家相伝的な文化から、数百年前のアンティークも未だに発見できる世界。

日本では、一説によると千利休が輸入したという逸話もある。従来のペルシャ絨毯のイメージを覆すような提案をしているので、是非とも彼のインスタグラムをチェックしてほしい。

Instagram@carpet_farshina

今回はコレクションから厳選して8つ紹介する。

1910s Unknown

その作風から、多くの名門があるイスファハンで織られた絨毯であるが、工房までは特定が不明。ウール95%、シルク5%の割合で織られており、驚くほど細い糸で編み込んでいる。

1980s DARI

イランの文化や歴史を担ってきたイスファハンにある著名な工房であるダーリで織られたもの。年代的には旧くないが、その美しい模様とブルーのカラーリングが光るトップピース。

1970s Yalameh

イラン中央部の遊牧民によって織り上げられる伝統的なペルシャ絨毯。他のエリアと比べると鮮やかなカラーリングと幾何学模様を得意としており、かなり個性的。ウール100%。

1910s Qom Aminian

コレクションの中でももっとも美しいと評するオリエンタルな1枚。砂漠の中にあるオアシスを表現したような美しいブルーなどの染色は、すべて草木染めでシルク100%。

1970s Basilik

1949年に氷河の中から発見された約2500年前のペルシャラグを再現した1970年代の作品。バジリクで生産されたもので、まるで壁画のようなデザインが際立つミュージアムピース。

1910s Hereke

現存するラグの中で、もっとも織り目が細かいギネス記録を持つスペシャル。ペルシャ絨毯はその細かさをノット数で表現するが、高級品で100万、美術品で150万だが、これは676万。

1880s Unknown

150年近く経った今も色褪せることのないオリエンタルなアンティークラグのコレクターズモデル。カシャーンで製作されたイスリムパターンで、シルク100%ならではの発色が最上。

1800s Unknown

圧倒的な雰囲気を放つこちらは、ペルシャ絨毯のプロトタイプと言われる伝統的なデザインを、無染色にてウール本来の色だけで表現。滅多にお目にかかれないキリムの最高峰である。

(出典/「CLUTCH Magazine 2025年2月号 Vol.98」)

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CLUTCH Magazine 編集部
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