「WESCO(ウエスコ)」とバイクカルチャーの親和性

1918年にオレゴン州ポートランドで誕生した老舗ワークブーツ・カンパニー、WESCO(ウエスコ)の日本のパートナーであるWESCO JAPANが設立20周年を迎えた。2024年4月にはアニバーサリーイベントを開催し、各地から関係者が集結。創業者のスピリットを頑なに守り、質実剛健なモノ作りを貫くWESCOは本国のリアルワーカーだけでなく、日本のタフなスペックを求めるバイク乗りたちの足元を守り続けている。この頁では、WESCO JAPANならではの豪華メンバーによるツーリングイベントのレポートと参加したトップビルダーのスタイルを紹介する。

リアルなバイク乗りに愛されるワークブーツの雄。

アニバーサリーイベントは2Dayで開催され、初日に展示会、2日目には関係者やカスタムビルダーたちが集い、豪華なメンバーでツーリングを敢行。ブーツブランドのイベントとしては非常に珍しいコンテンツにWESCOとバイクカルチャーの密接な関係が垣間見えた

オレゴン州ポートランド生まれのブーツカンパニー、WESCOはサイズやパーツチョイスなど、ユーザーひとりひとりの仕様に合わせたカスタムメイドと、堅牢な造りを武器に世界中にファンを抱える100年ブランドである。林業が盛んなエリアで創業したブランドだけに、元々はリアルワーカーの作業靴を主な使命として誕生したわけだが、特に現在の日本では仕事道具として使う人以外にも、ファッションやバイクギアとして広く親しまれている。

WESCOが日本で知られたのは、現在のWESCO JAPANの代表である岡本さんが20年以上前から様々なヴィンテージブーツを収集し、履いてきた経験からWESCOの堅牢さに感銘を受け、WESCO本社と直接関係値を築き上げたのがきっかけ。そこからWESCO JAPANが設立されるわけだが、ジャパンはWESCOの本場のワークの現場で磨き上げられた実力を、ストリートやバイクシーンに落とし込む発信を続けてきた。

老舗ブランドの歴史を掘り起こし、その信頼性やスピリットを広めるアプローチも日本のファンにフィットした理由と言えるだろう。そして、着実に知名度を高め、自分だけの一足を求める凝り性なユーザーやタフなギアを必要とするバイク乗りなどから支持を集め、今やワークブーツの最高峰の地位を築き上げているのだ。WESCO JAPANが歩んだ20年間は本国WESCOにとっても大きな20年間であったに違いない。

そして、20周年の節目に行われたアニバーサリーイベントでは、展示会に加えファンや関係者たちによるツーリングを開催するというWESCO JAPANならではの演出が用意された。悪天候が予想される日程ではあったが、WESCOのブーツを愛用するバイク乗りが自慢の愛車と共にWESCO JAPANに集い、大阪から滋賀県のカスタム・ワークス・ゾンまで走行。

カリフォルニア在住のビルダーや県外のビルダーも参加し、ヴィンテージバイクやカスタムバイクなど、様々なスタイルのバイクが集結した。バイク専用ギアではなく、いちワークブーツブランドがここまでバイクカルチャーと親和性を築き上げた例は他にないだろう。タフなギアを求め、リアルに走るバイク乗りの姿がそこにあった。

多くの参加者がWESCOブーツを愛用。堅牢さやリペアが可能であること、カスタムの自由度の高さなど、WESCOには個性的なバイク乗りに愛される理由が凝縮されている
ヴィンテージハーレーを中心に、チョッパーやオリジナルスタイル、フルスクラッチのカスタムなど、ツーリングに参加したバイクのスタイルは様々。このスタイルの振れ幅がWESCOの懐の広さを物語っている

バイクでしか見れない世界観を共有する1日。

バイクとクルマ約50台が集い、WESCO JAPANが拠点を構える東大阪市から滋賀県のカスタムワークスゾンまでの道のりを走行。カリフォルニア在住のレジェンドビルダー・木村信也氏も参加し、日本のトップビルダーたちにとっても貴重な機会となった。

ツーリングの目的地は滋賀県日野市にあるカスタムワークスゾンのショールーム。古民家を改装してショールーム兼カフェとして近々オープン予定。カスタムバイクと食事を楽しめる新たなツーリングスポットが誕生する。

天気が危ぶまれたがツーリングは決行。帰りの時間までに本降りになったが雨に打たれながら自走で帰るタフなバイク乗りの姿が印象的だった。参加者は雨の中を豪華メンバーで走り抜いた特別な記憶として刻まれたはず。

SNAP!参加者たちは強者ぞろい。

1976 HONDA CB750 “The King”|「WESCO JAPAN」岡本直さん(左)、「CHABOTT ENGINEERING」木村信也さん(右)

(左)WESCO JAPAN代表であり、WESCOの魅力やギアとしての可能性を日本のバイクシーンへ伝えた第一人者。愛車のCB750“The King”は攻撃的なフォルムが特徴的なストイックなスタイルだが、2018年にはアメリカ横断約5000㎞を完走。個性的な外観のスタイルだけでなく、リアルに走る性能を備える1台だ。

(右)カリフォルニア・アズサにあるチャボ・エンジニアリングのビルダー。日本人ビルダーの中でもいち早くアメリカに拠点を移し、ハンドメイドの造形美を武器にカスタムバイクをアートへ昇華したレジェンドであり、岡本氏の愛機“The King”の生みの親。バイクを自然体で楽しむ様子から、純粋にバイクを愛する木村氏の素の姿が見えた。

1955 H-D FL|「SHIP JOHN」マイク・イライアスさん

シップジョンの代表兼クラフトマンであるマイクはWESCO JAPANのディレクター河北氏の愛機で走行。自身の愛車は’66年H-Dアーリーショベルだが、不慣れなバイクを即席で乗りこなしワイルドな走りを見せた。着用するレザーは代表作ウィルスジャケットをベースにラングリッツとコラボで製作したスペシャルな1着。

1969 H-D FLH|「JAMS GARAGE 」新美佳昌さん

愛知県のジャムズガレージの代表。木村氏と共に’20年代以前のヴィンテージバイクでアメリカを横断するキャノンボールレースに何度も参戦する生粋のロングランナーだ。愛車のアーリーショベル・チョッパーは四国や九州などのロングツーリングを重ねながら手直しを加え、日本での走りを楽しんでいるのだとか。

BMW K1600B “STEALTH CROW”|「CUSTOM WORKS ZON」吉澤雄一さん

国内外の数々のカスタムショーでアワードを獲得し、世界を舞台に活躍するカスタムワークスゾンのビルダー。こちらの“STEALTH CROW”はBMW K1600Bのノーマルシャシーにオリジナルのカーボン外装を装備するコンプリートカスタム。横浜ホットロッドカスタムショー2019にてベスト・カフェレーサーを獲得した1台だ。

1950 H-D FL|「LUCK MOTORCYCLE」杉原雅之さん

京都ラックモーターサイクル代表の杉原氏は’50年式H-Dパンヘッドのチョッパーで参加。オールドペイントのタンクやスプリンガーなど、オールドスクールなスタイルの中にワンオフのシッシーバーのデザインなど、杉原氏のカスタムビルドのセンスが光る。オールドスクールでもショーバイクでもリアルに走るポリシーが貫かれている。

【DATA】
WESCO JAPAN
TEL06-6783-6888
https://wescojapan.com/

(出典/「CLUTCH2024年8月号 Vol.96」)

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CLUTCH Magazine 編集部
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