大人たるもの、ひとつは持っていたいパナマハットをディグる。

シンプルになりがちな夏のコーディネイトをビシっとまとめてくれる最良のアイテムでもあるパナマハット。いわゆる麦わら帽子の紳士版くらいにしか思っていない人も多いかもしれないけれど、じつはパナマハットは素材からスタイルまでかなり奥深いアイテム。そんなパナマハットを深掘りしたく、原宿にあるTHE FAT HATTER(ザ・ファットハッター)を訪れた。

パナマハットには永い歴史と伝統が存在。

例えばシンプルにTシャツ&ジーンズでも、そこに合わせるだけでぐっと大人っぽいコーディネイトに見えるのがパナマハットの強み。そんなパナマハットをオーダーからレディメイドまで幅広くそろえるザ・ファットハッターで、代表でありハットクラフトマンの菊地さんに詳しく聞いてみた。

「もともとパナマハットの歴史は古くて、産業革命後の1800年代には紳士の夏のアイテムとして、ヨーロッパの貴族たちにも愛されたアイテムです。

その代表格がイタリアのボルサリーノで、ボルサリーノがその素材に目をつけて、大量にエクアドルから輸入してハットに仕立てたことで、ヨーロッパ各地の夏のアイテムとして定着したようですね。当時はパナマ運河を通って輸入されていたことからパナマハットという呼び方が生まれたんでしょうけど、これは俗称で、いわゆるパナマハットは南米のエクアドルに自生するトキヤ草という草で編まれていて、エクアドル産のものだけがパナマハットと呼んでいいものなんです」

同じパナマハットでもグレードがある。

つまり、エクアドル産のトキヤ草で編まれたものだけが純粋なパナマハットで、それ以外はストローハット(麦わら帽)というのが正解。さらには同じエクアドル産のパナマハットにもモノによって大きく価格差が存在している秘密を聞いた。

「パナマハットにはグレードがあって、1インチ四方に編み目がたくさん細かく詰まっているモノの方が高いグレードになるんですよ。おもしろいのはこれは品質ではなく、当時の税関がかけていた関税に由来していて、編み目が細かく詰まっている方がトキヤ草をたくさん使っているので関税が高くなり、販売価格が高くなったということです。もちろん、編み目が細かい方が作業時間も職人の技術も必要になりますので、高品質には変わりはないんですが。ウチでも数種類のグレードの生地を用意しています」

同じパナマハットの生地でも、右、奥、左の順で高いグレードになる。よく見ると編み目の細かさが左に行くほど細かく密になっていることがわかる

現在でも職人によるハンドメイド。

しかも、現在でもパナマハットは現地エクアドルの職人が手編みで制作している(機械化が難しい)という昔ながらのスタイルで、なかには国にも認められた無形文化財的な職人が編んだものなどは超高級品として存在しているという。

「とくに目の細かい生地は熟練の職人でも簡単に編めるモノではありませんし、エクアドルのトキヤ草は柔軟性があって、割れにくく、ハットの素材としても、他のストローハットよりも優れてます。もし夏用のハットであれば、まずはパナマハットにチャレンジしてみてほしいですね」

パナマハットの最高級グレードは「モンテクリスティ」と呼ばれる。その編み目の細かさと密度は群を抜くクオリティ。エクアドルで専門の職人が時間をかけて編み上げている

ファットハッターが展開するパナマハットをチェック。

ファットハッターではクラシカルで伝統的なモノから、ファッション感度の高いデザインまで幅広いパナマハットを展開している。しかも原宿の工房で職人によって作られるオーダーのパナマハットも存在。パナマハットを試そうと思ったらまずはファットハッターをチェックしてみるのがおすすめだ。

しかも、オーダーのパナマハットであれば、お盆までのオーダーに限って、特別に2週間で仕上げてくれる(通常は1カ月以上かかる)というので、永い日本の夏対策としてもまだ間に合う。歴史とスタイルを長年積み重ねてきたパナマハットは、大人ならばひとつは持っていたいアイテムのひとつだ。

TFH SS006 CROW PANAMA

ファットハッターのスタンダードなパナマハット。クラウンはティアドロップシェイプで、初めてパナマハットを選ぶ人におすすめのモデル。カラー:ナチュラル、クラウン:12.5cm、ブリム8cm。4万9500円

3999005 JOHN DOE

名前の無い人という意味のJOHN DOEは自由な発想で作られるモデル。これはインディゴカラーの帽体に、リボンにはアフリカ、ブルキナファソ産のインディゴ染めの生地を使っている。パナマハットでもカラーを楽しみたい人向けの好デザイン。5万7200円

VCSS011 VINCENT G8 PANAMA

ヴィンテージの木型を使ってハンドシェイプによって作られるパナマハット。アクセントとして焦がし加工を施してファッション性を高めている。カラー:シュガーブラウン、クラウン:12.5cm、ブリム:9cm。7万4800円

TFH047 WINDBLOW

クラウンのトップがフラットなポークパイ型のパナマハットも昔から定番的なスタイル。ブリムが広めなので子どもっぽくならない。カラー:ベージュ、クラウン:11cm、ブリム:10cm。4万1800円

【DATA】
THE FAT HATTER
東京都渋谷区神宮前6-16-6-2F
TEL03-6450-6506
営業時間:13時~19時(平日)、12時~19時(土日祝) 不定休
https://thefathatter.com

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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