日本のヴィンテージレースの火付け役、千里浜サンドフラッツの45チャンピオンシップを現場レポ!

昨今、アメリカのThe Race of Gentlemenをはじめ、国内の草レースでも排気量750㏄(45ci)以下の小排気量車を対象とする“45”クラスに注目が集まっている。45クラスはレギュレーションが主にアメリカ製のハーレー、インディアンではフラットヘッドエンジンのみに絞られる非常にトラディショナルなレースだ。そこで、今年も全国から猛者が集った千里浜サンドフラッツ2022の45 CHAMPION SHIPに焦点を絞り、レースで特に目立ったライダーと車両を紹介する。

人気上昇中の45に絞ったレース、45チャンピオンシップが熱い。

750㏄のH-D、Indianのサイドバルブと排気量500㏄鉄ヘッドのTriumphが対象。次回はサイドバルブ対 OHVのバトルに期待したい

9月24、25日に石川県の千里浜なぎさドライブウェイにて、ヴィンテージバイクの砂浜直線レース、千里浜サンドフラッツが開催された。昨今の日本のヴィンテージレースの火付け役として全国のフリークから支持されるイベントだが、今回本誌が焦点を当てるのは昨年から設けられた〝45チャンピオンシップ〞だ。

千里浜サンドフラッツの〝45チャンピオンシップ〞は排気量45キュービックインチ(約750㏄)までの、H-DまたはIndianのサイドバルブ、500㏄のTriumphにレギュレーションを絞ったクラス。それは’30年代からアメリカで750㏄サイドバルブのアメリカ車と500㏄ OHVのイギリス車が競い、ボバーのルーツと言われるクラスCを意識したモノ。サイドバルブ対OHVのバトルは実現しなかったが、トラディショナルな世界観が尊重されたレースは結果だけでなく、車両のスタイルも見所満載。

昨年より前の千里浜では、45以下の車両はより大きな排気量の車両と競うため日の目を浴びにくい存在だったが、小排気量車のクラスができたことにより、ダートで扱いやすく、チューンの振れ幅が大きい45の人気が増しているというわけだ。いま全国のヴィンテージレースフリークが熱くなる45に注目したい。

“45 CHAMPIONSHIP”の他に、’50年代までのタンクシフトのアメリカ車、650㏄鉄ヘッドのTriumphを対象とする“80 CHAMPIONSHIP”、’69年までの英車や国産車も含た“PRE1970 OPEN CLASS”の全3クラスで開催。チョッパーなど様々なスタイルのマシンが競い合うのも見所のひとつだ

編集部の気になったバイクを紹介!

1939 H-D WLDD|Rider:Hiroyuki Nakai

“ 45 CHAMPIONSHIP”の頂点に輝いたのはウエスタンリバーの中井氏。元々TROGを走っていたWLDDを手に入れ、千里浜用に調整して初優勝を果たした。エンジンはWRの腰上を使用し、軽量フライホイールや軽量コンロッドを採用した高回転型のチューンが施されている。

車両が速くても何が起こるのがわからないのが千里浜だが中井氏は決勝までノーミスで完走。様々な草レースの経験値が活きた勝利だ

1948 INDIAN 648 BIG BASE SCOUT|Rider:Takeshi Funamizu

1948年の1イヤーのみ生産されたビッグベースはIndianの歴史上唯一のファクトリーレーサー。VALLEY MOTORCYCLEによるレースチューンが施されたTOKYO INDIANS船水氏の愛機は、ロードレースA.V.C.C.で好成績を収めるマシンだけに砂浜の走りに注目が集まった。

ロードレースの仕様からタイヤのみ変更し、このマシンでは初参戦。砂浜のスタートを掴めず惜しくも敗退したが、ポテンシャルの高さを感じさせる走りを見せた

1948 H-D WR|Rider:Kazuya Ito

ファーストアローズ伊藤氏はH-D謹製のファクトリーレーサーWRでエントリー。ナチュラルスティールワークスにて、WR本来の性能を引き出すオーバーホールを施している。千里浜サンドフラッツ以外でもTTレースやフラットトラックなども走るオールマイティな1台だ。

伊藤氏はWRに次ぐH-DファクトリーレーサーのKRでもオープンクラスにエントリー。写真はKR同士が競い合った貴重な瞬間

1934 INDIAN SPORT SCOUT|Rider:Masaki Egawa

トロフィークロージング江川氏のスカウトは、元々デイトナレースに出ていたヒストリーを持つレーサーにカリフォルニアのブラットスタイルがビッグベース仕様のレースチューン施したマシン。シフトミスにて敗退したが、日本の草レースでの今後の活躍に期待したい1台だ。

1942 H-D WLA|Rider:Yoshiharu Sakamoto

青森県三沢市のレーシングクラブDUSTERSの主宰であり、自ら製作したレーサーでアメリカのボンネビルやエルミラージュなどのランドスピードレースに挑戦する驚異のプライベーター。トラディショナルなモディファイ、スタイルのこだわりも坂本氏のレーサーの特徴だ。

無数のドリルド加工が施されたWLAエンジンは、燃焼室加工によってハイコンプに設定し、ビッグバルブ、ハイカムをインストール。今回の千里浜に向けてクロスミッションを採用

1941 H-D WLD|Rider:Atsushi Wakayama

旧き良き時代のレースシーンに精通し、モーターサイクルギアを取り扱うジャックサンズ若山氏の愛機は、WRのパーツを使用して当時のダートスタイルを意識したWLD。今回の千里浜サンドフラッツに向けてビッグバルブ化やビッグポート加工、ハイカムのインストールなど、エンジンのホップアップを施している。

1957 RIKUO RT|Rider:Takeshi Miyazaki

石川県でベビーツインに特化したパーツを取り扱うAAR宮崎氏の陸王RTは、ナローに加工したヒルクライマーフォークを軸に、フレーム内に収まるワンオフタンクなど軽快なヒルクライマーを意識したカスタム。ストローカーで排気量を860㏄に拡大し、RT2型の4速ミッションを採用している。

(出典/「CLUTCH2022年12月号 Vol.88」)

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