【業界人の愛用品】自身のラストノートを彩るマスターピース。|35summers/寺本欣児さん

その時々の流行ではなく、おそらく将来的にも使っていくであろう、愛用品の数々。ここでは本誌が推す業界人の愛用品を紹介する。世界的なヴィンテージコレクターでもある「35summers」代表の寺本さんの気になる愛用品は、一体どんなものなのか。最近買ったものも合わせて見せてもらった。

人生のラストノート、象徴となるものを。

1964年生まれ。兵庫県出身。自身が60歳の夏で35周年を迎えるという意味で、25歳の時に35SUMMERSを設立。フランスの名店であるANATOMICA も手掛けている

「香水でトップノート、ミドルノート、ラストノートがありますが、60歳を目前にした自分は正に人生のラストノートを迎えてきたという実感があります。ただラストノートは、もっとも印象が強く、その象徴となる匂いです。この年齢を迎えて、ようやく表現したいことが見えてきたと思いますね」

世界的なヴィンテージコレクターでもあり、Rocky Mountain Featherbedなどを擁する35SUMMERS代表の寺本氏。10代より強く影響を受けたピエール・フルニエ(ANATOMICA)とパートナーシップを組み、オリジナルも手掛ける。

「ヴィンテージは奥深く、未知のものが多いのですが、近年は手に入れることで得るインプットよりも、今までの経験をアウトプットする作業の方に楽しさを感じます。もちろん今までもベストを尽くしてきましたが、最近になってもの作りへの正解がようやく見えてきた。ファッションのタームは大事ですが、そこにとらわれず、時間をじっくりと掛けて、真摯なもの作りをすることが大切だと。だから晩年期は、そんなこだわり抜いたアイテムを身に纏い、年齢を重ねていきたいと思っています。ただ60歳で引退するつもりは毛頭なく、80歳までがんばろうと。ラストノートは長いんです(笑)」

「35summers」寺本欣児さんの愛用品。

1.JACKET/ANATOMICA

1年間掛けて作ったツイード生地を使ったジャケット。昨年の秋冬にリリースした。「ベースはベーシックなツイードですが、よく見ると色鮮やかな糸が織り込まれたオリジナルの生地です。英国の老舗Lovat Millに別注しています。ツイードは着れば着るほど馴染み、エイジングしていく感覚を味わえるのが醍醐味。きっと自分の晩年期には、いい風合いになっていることでしょう」

2.COAT/ANATOMICA

ANATOMICA東京の10周年を迎えて製作されたヴェンタイル仕様のスペシャルなシングルラグラン。「ANATOMICAの普及の名作であるシングルラグランコートに、サバイバルイエローと呼ばれる緊急事態を伝えるためのカラーリングのヴェンタイルを使用。この色とレスキューオレンジは、政府機関などでも使われるため、いつも作れるようにデータとして持っているカラーなんですよ」

3.WATCH/Patek Philippe

今から20年前に自身へのご褒美として購入したアクアノート。近年はその人気と廃盤したことが相まって、購入価格の数倍となっている。「ヴァンドーム広場の正規店で購入。時計、靴、車は新品を買う主義」

4.PEN/PILOT

クリエーションのスタートは必ずイラストからスタートする寺本氏。様々なメーカーのものを使ってきたが、行き着いたのは日本ブランドのモダンデザインだ。「このタイムラインは、ダブルアクションでペン先を収納するという大胆なデザインで使いやすい」

5.STICK/VINTAGE

それぞれフィッシングとハンティングを目的に作られたと思われるスティックは、ブリティッシュメイドのアンティークである。「これは英国に精通する加古さんという友人の遺品を譲り受けたものです。故人のものなので、詳細はわかりませんが、英国のスペシャリストが持っていたので、その造形美や質感から素晴らしいものだとわかる。密かに老後の楽しみにしています」

最近買ったもの、ハマっているもの

ベースノートにパチュリを使っている香りにハマっている。ルームフレグランスとキャンドルはdiptyque、香水は廃盤になった大型ボトルが珍しいSanta Maria Novella

(出典/「CLUTCH2022年8月号 Vol.86」)

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