【いま知りたい男NO.1】モーターサイクルをこよなく愛するアーティスト、コンラッド・リーチとは

ジミ・ヘンドリックス、スティーブ・マックィーン、チェ・ゲバラにピーター・フォンダ。彼らに共通することはある一人の男にポートレイト作品として描かれている、ということである。彼の名は、コンラッド・リーチ。モーターサイクルカルチャーやパンク、ロックなどのカルチャーに精通した人なら、その作品を目にしたことがあるかもしれない。日本ではまだ知る人ぞ知る存在だが、彼の出身地であるイギリスをはじめ、西洋諸国では高い知名度を誇るアーティストである。

独学で築き上げた、自身のスタイル

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冒頭で紹介したように、伝説的なアイコンを描いたポートレイトをきっかけに一躍有名となったコンラッド・リーチだが、独学でその道を切り拓いた人物である。絵画を作りあげるという行為を純粋に愛する彼は、描くだけに留まらず、木材を組み合わせキャンバスを張るという土台づくりから自身の手で行っているのだ。

作品の原点にあるのはパンクやハードコアなカルチャー

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90年代も終わり、パンクやモーターサイクルなどのカルチャーに傾倒していたコンラッドの作品には、それらのハードコアなカルチャーがインスピレーションとなった。当時の若者たちが制作していた手製のファンジン(ファンが集まって自分たちで作り上げた冊子。同人誌)やレコードカバー。彼がアイデアソースにしたそれらは、どれも単色で構成されたものだった。UK出身のパンクバンド『Killing Joke』がリリースしたファーストアルバムのカバーも、コンラッドが強く影響を受けたものの一つである。

色調、線、描かれた要素の少なさが生む、作品の引力

コンラッドの描く一連のポートレイト群は、見るものに強く訴えかける力を持っている。最小限に抑えられた線、少ない色調、アイコンを表現する特徴的な要素。描かれたアイコン本人の強烈な個性と色褪せない魅力が放つ力はもちろんだが、このシンプルさを突き詰めた画風が、アイコンたちの引力をさらに強いものにしている。
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たとえば、こちらの作品。黒の中に黒で描くという、 濃淡がシド・ヴィシャスの存在感を際立たせている。光の加減で作品の見え方が変わるというシックで挑戦的なアートワークからは、彼が追求するシンプリシティ(単純化)の妙が感じられる。

モーターサイクルへの思いを筆にこめて

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絵を描いている時、そしてバイクに乗っている時が幸福を感じる瞬間だと、コンラッドは言う。根っからのバイク好きである彼はヴィンテージのトライアンフを多数所有し、旧いバイクを手に入れては自分の手でレストアまでする。レースやイベントにも積極的に参加してきた。
近年はモーターサイクルやそのカルチャーを主題として絵を描き続けているコンラッド。イギリス出身らしくブラフシューペーリアやノートン、トライアンフなど英国車への愛情も強いが、同時にアメリカンモーターサイクルへの造詣も深く、中にはハーレーダビッドソンを描いた作品も。アート鑑賞にはあまり縁がないという人も、モーターサイクルを愛する一人であれば、一度はその目でコンラッドの作品群を見てみてほしい。彼の「絵を描くこと」に対する情熱、モーターサイクルとそれに関わるカルチャーへの愛を感じることができるはずだ。
(ヨシザワ)

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CLUTCH Magazine 編集部
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