1990年代以降のブランド同士のコラボを、「シップス」代表取締役社長・原さんと振り返る

ブランドとブランドが出会うことで生まれる、想像を超える化学反応──それがコラボレーション。近年、ブランド同士のコラボはますます活発化し、多くのコラボが世に溢れてきた。そんなコラボというものを、「シップス」代表取締役社長・原裕章さんの黎明期から現代までの証言を通して紐解いていく。前回に引き続き、今回は1990年代以降の後半戦。

90年代からはフィッシュテールコートのコラボサーガが始動

当然ながら、シップスはこれまでの長きにわたる歴史において、様々なコラボレーションアイテムを取り扱ってきた。そのなかでも90年代以降を代表するストーリーとして挙げられるのが、あるフィッシュテールコートをめぐるサーガ(長編物語)だ。

「91年、代官山に『マルセル ラサンス』の店舗がオープン(現在は閉店)。80年代にはフレンチ・シックが注目を集め、『シップス』が提案するスタイルにも新鮮な風を送り込みました。『マルセル ラサンス』は70年にフランスで生まれたブランドで、アメリカントラッドの世界観をフレンチの流儀で洒脱に再解釈したコレクションが人気を集めていましたね。このブランドとシップスは契約を結び、日本で初めての店舗を開いたのです。“パリの『マルセル ラサンス』のショップをそのまま日本に持ってくる”というコンセプトに基づき、あらゆるアイテムを代官山で展開したのですが、そのなかに存在していたのが『マルセル ラサンス』と『サイエンス ロンドン』のコラボで生まれたフィッシュテールコートでした」。

「サイエンス ロンドン」は、様々なブランドのデザイナーやコンサルティングを手がけてきたティム・ウォーリンガーが80年にイーストロンドンで設立したブランド。ウォーリンガーが手がけるフィッシュテールコート(=モッズコート)は、ブランドのシグネチャーアイテムとなっていた。

「『マルセル ラサンス』は、『サイエンス ロンドン』のフィッシュテールコートに艶やかなナイロン素材を当て込むというエスプリを披露していました。このスタイルは、『シップス』にとっても大変に共感できるものでした。『シップス』が展開する様々なスタンダードアイテムと合わせることで着こなしが洗練されるからです。そのため、『シップス』で働くスタッフの多くが自身で購入して自身のスタイリングに取り入れていました。もちろん、私もそのひとりです。

この『マルセル ラサンス』×『サイエンス ロンドン』のフィッシュテールコート以来、『シップス』はブランドやマテリアルをアレンジしながら数多くの“フィッシュテールコートコラボ”を仕掛けていくことになります。『シップス』が50周年を迎えた今年はアニバーサリーアイテムとして様々なコラボモデルをリリースしているのですが、そのひとつとして91年当時のフィッシュテールコートも蘇らせています」。

今年は、「シップス」の50周年を祝う特別な逸品としてコラボレーションアイテムがいくつもお目見えするという。「シップス」にとってコラボレートは祝祭であり、今ではショップの歴史を象徴するものにまでなっているのだ。

「熱狂の70年代、私たちは未知なる服と触れる高揚感をお客さんと分かち合ってきました。その使命は、現在も続いているのです。高揚感をお届けする。その高揚感がもとになって一日が素晴らしいものになる。そうした素晴らしい一日を積み重ねることで幸福な人生が創られていく―—。『シップス』は、これからも幸福の起点となり得るコラボレーションアイテムを取り扱っていきたいと考えています」。

【1990年代~コラボ】サイエンス ロンドン × シップス

サイエンス ロンドンとシップスがコラボしたバージョンもあります!

2000年頃、「シップス」は「マルセル ラサンス」がコラボしてきた「サイエンス ロンドン」とコラボ。カーキカラーのウールナイロンを採用し、武骨と洗練の間隙を突いた。写真のように紺ブレと合わせると、まさにハマリ役となる。

【1990年代~コラボ】マルセル ラサンス × シップス

脱着式ライナーで3シーズンに対応したモデルもリリース!

2000年代中期、「サイエンス ロンドン」が活動を停止した後に「シップス」は「マルセル ラサンス」との直接コラボレーションをする。コットン×ポリウレタンで伸縮性を持たせたシェルに脱着式のキルティングライナーを配している。

【1990年代~コラボ】グローバーオール × マルセル ラサンス × シップス

ボクは紺ブレに合わせて着るのが好きなんですよね!

2010年頃には、ダッフルコートで知られる「グローバーオール」を迎えたトリプルコラボモデルも製作。原さん自身は、「マルセル ラサンス」を起点としたコラボフィッシュテールコートを合計で6着も所有してきた。紺ブレと合わせるのが原さんの流儀。

シップス50周年で91年当時のモデルを復刻! サイエンス ロンドン × マルセル ラサンス × シップス

創業50周年記念で復刻されたのがこちら。91年当時の「マルセル ラサンス」 × 「サイエンス ロンドン」が蘇っている。当時、スタッフの多くがスーツに今作を合わせていたという。12万1000円(シップス 銀座店TEL03-3564-5547)

(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Pick Up おすすめ記事

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...