英米のスタイルをミックスさせたタッセルローファー「クロケット アンド ジョーンズ」のキャベンディッシュ3【名作ローファーブランド図鑑】

トラッドスタイルにおけるマストアイテムとして欠かすことのできないローファー。1930年代に誕生し、いまでは世界各国様々なブランドがこの形の靴をリリースしている。そんな数あるローファーにおいて、2ndが考える名作の中の名作を厳選した。今回紹介するのは「クロケット アンド ジョーンズ」のキャベンディッシュ3だ。

「Crockett & Jones(クロケット アンド ジョーンズ)」のCAVENDISH 3

1940年代後半にアメリカにて誕生したタッセルローファーは、アイビールックの代表的なスタイルとして定着した。そして英国へと渡り、そのデザインはより洗練されたといわれている。そこで欠かすことのできないのが、1879年に創業した「クロケット アンド ジョーンズ」だ。革靴の聖地・ノーザンプトンにて140年以上にわたり革靴の生産を続けてきた老舗が生み出した“タッセルローファーの完成系”ともいえる1足は必ずや押さえておきたい。

英国の老舗「クロケット アンド ジョーンズ」の看板モデル。前身となる[キャベンディッシュ]から2度のアップデートを経たこのモデルは、ヒールやアーチ(踵から土踏まずにかけての曲線部分)のフィッティングを従来より狭めることで足に沿うようなフィッティングを実現している。また、主張しすぎないタッセルやシャープなラウンドトゥなどの計算されたバランスはあらゆるスタイルに対応する抜群の汎用性を誇る。12万6500円(グリフィンインターナショナルTEL03-5754-3561)

キャベンディッシュ3が名作たる5つの理由

日本人の足型を考慮した新開発のラスト「375」を採用

モデル名[キャベンディッシュ3]の名が示す通り、“3”となる前の2つの前身モデルが存在する。1980年代に誕生し、アメリカと英国で販売された、[キャベンディッシュ]、そして1995年に発表された[キャベンディッシュ2]は幅が広く、日本人の足型からすると特にヒール部分のフィッティングが緩かった。そこで日本人の足型に合うようにヒールやアーチ部分を従来より狭めたラスト「375」を採用。英国の老舗が日本人の足型に合わせて作ったモデルがスタンダードとなっているのが我々にとっては何とも感慨深い。

140年以上に渡り英国・ノーザンプトンにて製作

「クロケット アンド ジョーンズ」の創業は1879年。革靴の聖地である英国はノーザンプトンにて開業し、ハンドメイドによるハイクオリティなモノ作りを武器に世界的な名声を獲得した。1足を完成させるのに約8週間を要するグッドイヤー製法の採用や、世界で最も多くの木型を持つなど、英国を代表するシューメーカーとして140年以上の歴史を誇り、いまもなおノーザンプトンの自社工場で熟練の職人による手作業を中心としたモノ作りを行なっている。

熟練の職人が手作業で仕上げたタッセル

タッセルローファーの最たる特徴である房飾り(タッセル)は熟練の職人が手作業で仕上げている。キメ細かい最上級のカーフを使用したやや小ぶりのタッセルはこのモデルのアイコンとして抜群の存在感を放つ。タッセルのサイズとともにタンの長さやフロントのモカのステッチ、そしてトゥとの距離感など、まさに黄金比ともいえるバランスのデザインは惚れ惚れするほどだ。

英米両国の良さをミックスした端正なルックス

名だたるブランドのOEMを請け負ってきた実績のある「クロケット アンド ジョーンズ」。アメリカの名ブランドの生産を請け負ってきた歴史もあり、この[キャベンディッシュ3]を愛用する業界人は「英国靴にしてほのかにアメリカの香りも感じられる」と口を揃える。直線的でややシャープなトゥは英国的でありながら、幅広な甲部分のフィッティングやアメリカ的なややショートノーズである点などがその理由だ。まさに英米の革靴の“いいとこ取り”な1足である。

名だたるブランドのOEMを担ってきた実績

1967年に創業し、英国の伝統的なスタイルをアメリカ的視点から解釈して“ブリティッシュアメリカン”というスタイルを世に知らしめた「ラルフローレン」の革靴の製作を担ったというのは有名な話だ。ほかにも革靴好きなら誰もが知るビスポークメーカーの生産を担った過去を持ち、そこで培われたノウハウがブランドのクオリティに大きく生かされているのは言うまでもない。この[キャベンディッシュ3]もこれらの歴史によって生み出されたのである。

(出典/「2nd 2025年6月号 Vol.212」)

この記事を書いた人
みなみ188
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みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
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