表面が擦れて色褪せしてこそ魅力が増す、自分だけの一着に育てられるピグメント染めのTシャツ。

ピグメント染めによる圧巻のカラーバリエーションで知られる「Good On」。実は20年以上も前からやっているんです。今では様々なショップで目にする事も多くなってきましたし、耳にする機会も増えていると思います。そもそもピグメント染めって一体どんな染色方法なんだろう? と思っている方々も沢山いらっしゃると思うので、今回はそんなピグメント染めについて書いてみようと思います。前回の話もぜひご覧ください。

そもそもピグメントって何??

ピグメントとは『顔料』の事を指し、顔料とは、水や有機溶剤などの溶剤に溶けない着色用の個体粉末の事を言います。塗料や化粧品、プラスチックなどの着色剤などに用いられており、絵の具も顔料です。塗料に顔料を加える事で、様々な色を表現し、美観を表現する役割を果たしています。

ピグメントを使った染めとは?

顔料を調合して新しい色を生み出している

粒子の大きい顔料をバインダーと呼ばれる接着剤を使用して、Tシャツの生地に固着させる染色方法です。着用による摩擦や洗濯回数が増すごとに、表面が擦れて徐々に色あせし、色合いが変化して行く特徴があります。長く愛用するほどに上質なビンテージウエアのような自分だけの一着に仕上がっていく“経年優化”が楽しめる染色方法です。

衝撃的な出会い

他にはない発色の良いカラバリエーション

上記ではつらつらと小難しいことを書きましたが、「要はビンテージの古着のような風合いに最初から染め上げてしまう」画期的な染色方法なのですが、この染色方法が非常に難しい技法だったのです。

初めての出会いは20数年前。ピグメント染めを染色工場の職人さんに紹介してもらったときでした。サンプルを見せていただいた瞬間に衝撃が走ったのを今でも覚えています。

当時から大好きだった古着の中でもとびきりのビンテージのスウェットやTシャツに見られる風合いが最初から味わえるなんて、今直ぐにでもピグメント染めを採用するしかないでしょう!! と言う事で「Good On」が永きに渡って展開してきたピグメント染めシリーズの幕開けとなったのです。

しかし、、、冒頭でも書いた通り、とてもとても難儀な染色方法だったのです。

職人さんも紹介はしてくれたものの、一度も量産をした事が無いと言う、何もかもが手探りからの幕開けとなりました。

何でも最初から上手くいくはずがない。

ピグメント染めをしたブラック。右)染上がり/ 左)数年着用

ピグメントシリーズのプロジェクトはすぐさまスタートする事になりましたが、商品化をする前に当然サンプルを依頼する事に。まずはビンテージのバンドTシャツのようなブラックを作りたいと職人さんにリクエストし、職人さん達にとっても初めての商品化に向けてのサンプル作り。待つこと数日後に染め上がったTシャツが到着しました。

 ときめく鼓動を押さえながら、いざ段ボールを開封。ドキドキ。

『カッコいい―!!』と大絶賛。

さっそく着用するべくTシャツ達を取り出してみます。

!? !? !? !? !?

ん? なんだ? なんで手が黒い??

定着させたはずのブラックの顔料が手に付いてTシャツを触った瞬間に手が真っ黒に。

これでは売り物にならないと、一気に落胆…世の中そんなに甘くはないですね。

これが職人さんのハートに火をつけ、永きに渡る奮闘の日々が続くのであります。

様々な条件が必要である事がわかった

顔料をしっかりと定着させるにはどうしたらいいのか。様々な理由が考えられ、それらを一つひとつ検証していく作業は気が遠くなるような日々でした。

例えば、

・縫製を終えたTシャツにも不純物がついているのでまずは綺麗に洗い流すのが必要。

・釜(かま)に入れる枚数によっても顔料の定着具合が変化するため、枚数を調整するのが必要。

Tシャツ全体にムラなく顔料を付着させるコツがあるはず。ベストな方法を見つけなくてはならない。

・釜(かま)の温度設定によっても定着具合が変わってくる。

・顔料は1グラム単位の調合で定着具合や風合いが変わってくる。

 などなど、他にも尽きることなく次から次へと我々の壁となり立ちはだかってきました…

職人との二人三脚

これらの問題をひとつずつ解決する事から始まったプロジェクトは常に職人さんとの二人三脚で出来上がっていきました。問題が出るたびに工場へ出向き、解決に向けた話し合いと実験が始まり、当時は『また問題発生か~』と朝から晩まで工場に缶詰め状態で必死になって解決してきたのが今となっては懐かしい限り。20数年、職人さんと二人三脚で積み上げてきた努力は今、ブランドがこうして27年も継続できた礎になっていると改めて思います。

世界一を誇るカラーバリエーション

気が付けばピグメント染め一筋20数年。現在では過去のカラーを含めると100色近いカラーを生み出してきました。また毎年、新しいカラーもリリースしており、これは恐らく後にも先にも世界中を見渡しても「Good On」だけであろうと思います。現に昨今では国内にとどまらず海外でも非常に人気が集まっています。

永きに渡り職人さんが試行錯誤してきた日本の技術が世界中に認められた証であります。

また、日本の技術で染め上げられたカラーバリエーションは国境を越え、「Good On」というブランドで世界が繋がっていく訳であります。永きに渡り苦労を重ねてきた先にこんなに素晴らしい事が待っていたなんて、冥利に尽きるとはこの事だ。

この記事を読んでくだっている読者の方で、少しでも興味を持っていただけたらなら、是非、一度袖を通して体感してみてください。

職人さんの拘りの技術が詰まった世界一のピグメント染めです。

https://www.instagram.com/good_on_shop/?hl=ja

この記事を書いた人
広沢泰
この記事を書いた人

広沢泰

ミスターグッドオン

Good Onの創立から携わり27年間セールスに従事。『ミスターグッドオン』の異名を持つ。幼少期に観た80年代のアメリカ映画や音楽に衝撃を受けファッションに目覚める。ジャンルにとらわれない無類の古着好きでもある。プライベートでは料理やマラソン、農業と非常に多趣味な面もあり、普段の仕事とはかけ離れた休日を過ごしている。人見知りしない性格で初見の方とも直ぐに打ち解け、業界・業種問わず様々なジャンルの方々とも親交が深い。
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