生地を洗い、加工し、外観を整える。最後の工程「整理」を経て、生地だったものが服の素材になる

生地作りの最終工程である「整理」は正式名称を「染色整理」と言い、標準的な工程数は15をゆうに越える。そのままではとても衣料にできるような状態ではない生地を検査し、汚れを洗い落とし、染色、表面を整え、加工を施すといった、生地だったものを服の素材へと変える最後であり、重要な工程だ。その中でも「整理」と呼ぶものから主要な工程「縮絨」と「洗浄」、「起毛」の3つを取り上げる。

標準的な工程数は15をゆうに越える

糸から生地までの工程を追う最後は「整理」工程。工場から届いたばかりの生地は、紡績油や汚れ、織機や編み機特有の跡があることから、そのままではとても衣料にできるような状態ではない。そんな状態の生地を検査し、汚れを洗い落とし、染色、表面を整え、加工を施すといった、生地だったものを服の素材へと変える最後の工程がこの「整理」だ。

正しくは「染色整理」と言い、標準的な工程数は15をゆうに越える。その中にはよく耳にする「後染め」や「毛焼き」といった加工も含まれており、この「染色整理」という工程の中で行われている。今回、この工程すべてをお伝えすることはできないのだが、その中でも「整理」と呼ぶものから主要な工程「縮絨」と「洗浄」、「起毛」の3つへ注目する。

生地の雰囲気が最も変わる「整理」の主要工程

縮絨(しゅくじゅう)|素材の特性を利用し生地を密に仕上げる

このロールで圧をかける

羊毛繊維は水分を加えて揉むと、繊維同士が絡み合って縮む性質がある。その性質を利用しているのが「縮絨」だ。縮絨機中央の上下にはローラーがついており、水分と縮絨促進剤を加えた生地がそのローラーの間を通ることで圧をかけていく。その際に生地と生地が擦れ合うことで熱が生まれウールが縮み、組織が密に、毛羽立った生地が出来上がる。

【豆知識】より良いものを生み出すための、先人達の知恵と工夫

愛知県尾州の至る所で「のこぎり屋根」が見つかる。その名前の通り、のこぎりの歯を空に向けたような形の屋根が特徴的だ。生地や糸に悪影響を与える南側からの直射日光を防ぐため、斜めの屋根はすべて南側についている。現代ほどライトが充実していなかったこともあり最大限、北から日光を取り入れるために北窓がつくこの形が考案された。

洗浄(せんじょう)|硬く、汚れた生地を洗うことで綺麗に軟らかく

工場へ届いたままの生地は、手触りが悪く、紡績油や汚れが付いているので、洗剤を使用して綺麗に洗い落としていかなければいけない。もみ洗いをするためのローラーは、昔から変わらず木製。もちろん、木製なのでどんどん削れていくため、数年に一度交換をしなければいけないが、最適なもみ洗いのために、そこの妥協は一切しない。

起毛(きもう)|布地を針でかき出し毛羽立てる

「起毛」とは表面を毛羽立てる工程だが、ひとつの機械では完結せず、回転の速さ、針の向き、太さ、長さ、硬さ、密度、回転時間などが調整された機械を何機か経由して出来上がる。針のついたロールがぐるりと丸く付けられており、全体に加え、針自体も回転しながら生地を炒めすぎないよう起毛加工が加えられていく。

(出典/「2nd 2024年5月号 Vol.204」)

この記事を書いた人
パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...