アーチケリーが継承する、50sアメリカンヴィンテージの世界へ。

2020年にデビューしたばかりの革靴ブランド、アーチケリーは50sのアメリカンヴィンテージシューズをもとにしたアイテムを展開。「革靴の黄金期」と称されるこの年代の再現は、到底真似できるものではない。

黄金期の革靴を再現するために惜しみないこだわりを注ぐ。

(左のVチップ)ALGONQUIN SPLIT TOE BLUCHER OXFORD|8万5800円/(右のキャップトゥ)7 EYELET CAP TOE OXFORD|8万5800円

神保町の老舗「ミマツ靴店」で経験を積んだのち、ヴィンテージシューズの魅力に取り憑かれた清水川栄さんが2020年に立ち上げた「アーチケリー」。もとはメイドトゥオーダーのみ受け付けていたが、「革靴の黄金期」とされる50sのヴィンテージアメリカンシューズをベースとしたものづくりへの反響もあって、阪急などの百貨店にて既成靴の取り扱いもスタートしたばかり。

50sらしい良質な革のセレクト、旧き良き意匠の再現、丁寧な作り込みはもちろんのこと、靴箱のロゴデザインや、ライニングに配される織りネームなど、細かな箇所に至るまで当時の世界観を再現するこだわりに、革靴好きこそ共感すること間違いなし。

ベースは50sごろのヴィンテージアメリカンシューズ。

アーチケリーがベースとするのは、すべて50sごろのヴィンテージアメリカンシューズ。「革靴の黄金期」と称されるこの時期の個体は、デザインの種類の豊富さ、つくり込みの丁寧さ、きめ細やかな革質、どれをとっても他の年代に比べて頭ひとつ抜きん出ている。アーチケリーのデザイナーである清水川さんは、もちろん当時のヴィンテージを大量に所有。デザインソースとしている。

ネトルトン

いわゆるVチップ型は、本来ネトルトンの[アルゴンキン]と呼ばれるモデルが源流。モカ部分は手縫いで、ミシン縫いの個体はアルゴンキンと呼ばれていなかった。54年製。

フローシャイム

フローシャイムの[ランブラー]と呼ばれるモデルで、58年製。ステッチや革の色味、そのきめ細やかさなど、ヴィンテージの魅力が詰まった、清水川さんにとってのお宝。

アーチケリーのメイドトゥオーダー。

現在では既成靴も展開しているアーチケリーだが、本来はメイドトゥオーダーが中心。膨大なヴィンテージシューズのアーカイブと、それらをもとに製作したサンプルを参考にしながら、自身の理想とする革靴を製作できるのだ。

素材や色味を選べるのはもちろんのこと、細かなディテールのカスタムを相談することも可能。昔の革靴の写真や私物のヴィンテージを片手に相談する強者もいるとか。

コンビレザーのウイングチップ

王道のウィングチップも、ホワイトバックスとカーフのコンビでエレガントに。張り出したコバのホワイトステッチがアクセントになる。メダリオンは好みのデザインで指定可能。

スウェードのタッセルローファー

名門C.F.ステッド社の高級革「ヤヌスカーフ」を使用。デザインは普遍的だが、タッセルローファーの生みの親である某ブランドの創業年にかけて18× 2つのタッセルを装備。

スウェードのキャップトゥ

上で紹介している7アイレットモデルの素材違い。毛足が柔らかくて長く、細やかな「ヤヌスカーフ」のタバコカラーを使用。よりカジュアルに履きたいならこちら。

メッシュのUウイング

通称「レイジーマン」と呼ばれる紐無しのUウイングは、ヴィンテージにおいてはレア中のレアとされる。メッシュ素材を配した革靴は実際に夏用靴として50sに出回っていた。

コンビレザーのVチップ

[アルゴンキン]の素材変えバージョン。実際に50sのネトルトンにこの配色があったとか。もこっとした独特の質感を持ち、柔らかで撥水性のある鹿革のスウェードを使用。

カーフレザーのホールカット

かかとの接ぎは内側にオフセットされており(ヴィンテージだと外側が多い)、シームレスなヒールに。羽根にあたる部分の切れ目を長くとっており、バランス感を調整している。

こだわりの詰まったアーチケリーのファクトリー。

アーチケリーが目指したのは、50sの革靴が持つつくり込みの丁寧さ。現代においては当時ほどの技術力を持つ職人も少なく、デザイナーの清水川さんは50s製「フローシャイム」のキャップトゥを片手に、理想とする革靴の再現ができる工場を自ら探して回ったという。工程によっていくつかの工場を使い分けているが、基本的にはそのどれもが、日本における革靴づくりの聖地である浅草を拠点としている。

【問い合わせ】
アーチケリー
090-4924-6826

情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 20227月号 Vol.184」)

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